物価統制令は1946年3月に公布されました。戦後のインフレ対策として不当な高額取引を禁止したもので、銭湯料金も物価統制令の対象でした。
今のように各家庭に風呂がない時代。銭湯は国民の公衆衛生を高めるために必要不可欠な施設でした。そのため、銭湯料金は国民が毎日でも通えるような値段に定められたのです。経済の復興とともに統制は徐々になくなり、52年ごろにはほぼ撤廃されました。現在残っているのは、銭湯料金だけです。
時は流れ、かつては国民の公衆衛生を守る存在だった銭湯も、各家庭に風呂が普及したことにより、その存在感は徐々に薄れています。東京都生活文化スポーツ局によると、都内の銭湯は68年の2687軒をピークに減少の一途をたどり、昨年12月時点で462軒となっています。
また、コロナ禍も銭湯経営に打撃を与えました。東京都生活文化スポーツ局によれば、11年から2000万人台で推移していた東京都の銭湯の延べ利用者数は、21年に1977万人に減少。22年は2002万人と回復したものの、コロナ禍前の水準には届いていません。こうした中での値上げは、利用者の足を遠のかせる要因にもなりかねません。
銭湯経営にとって厳しい状況が続きますが、生き残りをかけて創意工夫する事例も出ています。シャンプーやトリートメントなどのアメニティーを数多く用意したり、風呂上がりの楽しみとして漫画を取りそろえたりして、訪れる楽しみや利用者の満足度を上げようとしている銭湯もあります。また、ヨガや落語会など、利用者以外も足を運びたくなるようなイベントを銭湯で開催するなど、それぞれの事業者が工夫を凝らしています。
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