年間2億本以上を売り上げる、有楽製菓のロングヒットセラー商品「ブラックサンダー」。ココアクッキーとプレーンビスケットをチョコレートでコーティングしたザクザク食感が特長だ。35円という安さにもかかわらず食べ応えがあり、1994年に誕生してから幅広い世代に愛されている。
そんなブラックサンダーを手掛ける同社が、コツコツと取り組んでいたプロジェクトがある。商品に使用するカカオ原料を児童労働に頼らないものに切り替えるプロジェクトで、2018年に始動した。国内メーカーとして、他社に先駆けた取り組みだったわけだが、それまでは「業界団体や大手メーカーが取り組むべき課題」と認識していたという。
経営品質部 係長の牧宏郎氏は「カカオの生産現場で子どもが働いていることは認知していました。しかし、当社はカカオ豆を直接購入していないことに加え、使用量も少ないので、業界団体や大手メーカーが対応すべき問題と考えていました」と当時を振り返る。
児童労働問題を正しく認識し自分ごと化するようになったのは、児童労働撤廃を推進する「NPO法人ACE」からその実情を聞いたときだった。「子どもの笑顔を奪って生産されたカカオ豆を使用して、人々を笑顔にする菓子をつくっている」状況を変えるべきだと気付き、自社でできる取り組みとしてブラックサンダーから変えていくことにした。
ブラックサンダーは当時から有楽製菓の看板商品として、会社の売り上げをけん引していく存在だった。そのため社内から「売り上げに大きく影響のない商品から着手したい」という声も当時あったという。
「この活動の目的は、カカオの生産現場に児童労働問題があることを広く知っていただくことです。売り上げへの影響はもちろん認識していましたが、人気商品から着手することにしました」(牧氏)
有楽製菓の覚悟が見える意思決定だった。しかし、言うは易く行うは難し。その道のりは決して平たんではなかった。ブラックサンダーの原料を供給してくれている国内企業に「児童労働に頼らない原料を使用したい」と相談したが、主要取引先の3社ほどから「難しい」と断られた。
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