現在、世界経済が陥っている、グローバル化もブロック化も、「少しでも多くの富を手にする」というイドに支配されたものだ。攻めの形がグローバル化であり守りの形がブロック化であるにすぎない。
そこには他者に対する愛が欠如している。分かち与え、他者を愛し、その幸せを願うこと。誰もが人として本来あるべき姿を知りながら、人が集まった社会、ことに国際経済は奪い合いに終始している。
誰もそこに新しい価値を提示することができない中で、「幼少期から利他の精神を学ぶ日本にこそそれを乗り越える原動力がある」とプラット氏は言う。つまり技術はただありのままでは未完成であり、善にも悪にもなりうる。それをどう使いこなしていくか、つまり世に広めて行く産業やルールを作っていく行政の成熟がセットになるべきものだと言うのである。
そしてその意味において、社会全体が利他の精神を色濃く持っている日本に、大きなアドバンテージがあるとプラット氏は主張した。元々英語で書かれたスピーチ原稿の公式翻訳なので、少し分かりにくいが原文のまま抜き出しておく。「顧客を愛することは、すべての人の幸せを生み出す哲学であるばかりではありません。それはまた、顧客により多くの愛を示す日本製品は、日本の自動車産業と日本全体にとって、第2の奇跡的な経済成長を生み出すことができるマズローのレイヤーでもあります。人なくして自働化(にんべんのついた自働化)なし、と自働化が教えてくれたように、『アイなくしてAIなし』と日本文化は教えてくれます」(プラット氏)。
言われる側の日本人の1人として、気恥ずかしさも手伝って、それを丸のまま肯定できない気持ちはあるが、今の最先端テクノロジーが抱える問題を鋭く抉った発言であることもまた確かである。昨今の最先端テクノロジーの課題は“やれること”と“やっていいこと”のギャップをどうやって埋めていくかにあると思う。
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