プラット氏はプレゼンテーションの中で、トヨタ自動車が開発した「GRヤリス」の自動運転車が、ジムカーナコースで激しくドリフト走行を繰り広げる動画を見せた。この自動運転車は、元WRCドライバーのヤリ=マティ・ラトバラ選手とタイムで争い、わずかな差で負けた。
これこそが象徴的な場面である。自動運転がWRCドライバーと遜色ない走行が可能だと言えば「公道でそんな危険な運転をする必要はない」という声が必ず上がるだろう。
確かにこうした技術を自動車産業が善性を持たずに普及させれば、それが危険であることに異論はない。しかし、もしもの場面での回避運動でこの技術が生かされれば、命が救われることもあるだろう。それはここ数年、トヨタが唱えている「幸せの量産」、つまり人を幸せにする技術を多くの人に手の届く価格で提供するという思想とも重なる。
日本の自動車産業が、テクノロジーを善なる道にうまく導くことができるかどうか。100年に一度の改革期であるからこそ、技術が世界を幸せにできるかどうかは重要になってくるし、それこそが日本経済の未来に多大な影響を与える可能性がある。そう言う意味では、タテシナ会議の可能性が示された1日でもあった。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。
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