このような形で「父に認められようと、時代錯誤的な父の戦略に固執する2代目社長」はがんばればがんばるほど、「恐怖政治で社員から嫌われる2代目社長」になってしまうケースを、何度か見てきた。
人口減少社会での拡大戦略を維持するための過剰なノルマ、その無茶な目標を必達するためには何をしてもいいというモラルハザード。そして同族経営の中小企業にありがちな「意欲・覚悟」という精神主義が引き起こすパワハラ体質――。
ビックモーターには、人口増時代のビジネスモデルに固執する日本企業のあらゆる「病」が見て取れる。こういう企業不祥事が起きると、マスコミはいかに社長とその跡取り息子の人間性や考え方が異常だという「個人バッツシング」の方向にもっていきがちだ。そのほうがシンプルで分かりやすいので、視聴者や読者の溜飲を下げるからだ。
ただ、実は経営陣が暴走するには、暴走するだけの、組織の構造的な問題があるのだ。企業の99.7%が中小企業という日本には、業種や規模は違えど、ビッグモーターのような「恐怖政治」をしている会社など掃いて捨てるほどある。
不正の内容は確かに前代未聞だが、それを引き起こした「組織の病」は日本企業では定番というほど、ありきたりなものだ。ビッグモーターの暴走からわれわれが学ぶことは多い。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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