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「伝えたいこと」を投げても、なぜ「伝わらない」のか伝えたいこと(2/3 ページ)

» 2023年08月02日 08時00分 公開
[松永光弘ITmedia]
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「いいこと」をいっていれば伝わるのか

 「伝えたいこと」と「伝えられたいこと」は違う──。

 つい先日も、そのことを痛感させられる出来事がありました。生成型AIのことを知らなかったある中学生に、スマートフォンでChatGPTをつかわせてあげたときのことです。

 彼がAIにいきなり投げかけたのは、「親がうざい。どうしたらいい?」という言葉でした。なかなか辛辣(しんらつ)ですが……、これに対してAIは、すかさず次の答えを返してきました。

 「親との関係に悩むことは、多くの人が経験することです。まずは、親の行動がどのようなものであっても、彼らがあなたを愛していることを忘れないでください。彼らの行動には、あなたが気づかないような背景や理由があるかもしれません」

 驚いたのは、あとでいろんな人(大人)にこの返答を見せたところ、絶賛する意見が多かったことです。

 「お手本にしたい」「子どもに読ませたい」「学校の先生も参考にすべきだ」などと、みな思った以上の高評価でした。

 確かにAIの返答は、いいことをいっているとは思います。

(提供:ゲッティイメージズ)

 でも、忘れてはいけないのは、この言葉はその中学生に投げかけるもの(伝えるもの)だということです。

 本当にこれで彼は納得するのか。「伝わる」のか。

 実際のところは……、みじんも納得せず、でした。「AI、うざい」といったなり、彼はすぐさまスマートフォンを置いてしまいました。

 大人たちには、AIの返答がすぐれた投げかけのように見えたのでしょう。しかし、それは自分たちが「伝えたいこと」にすぎません。

 いくら「いいこと」「正しいこと」をいっていても、「伝えたいこと」そのままを、相手が受け入れてくれるとは限らないのです。

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