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「伝えたいこと」を投げても、なぜ「伝わらない」のか伝えたいこと(1/3 ページ)

» 2023年08月02日 08時00分 公開
[松永光弘ITmedia]
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受け入れられるのは「伝えられたいこと」

「伝え方――伝えたいことを、伝えてはいけない。』(松永光弘/クロスメディア・パブリッシング)

 受け手自身が聞こうと思えば聞くけれど、聞きたくなければやめてしまう──。伝え手の立場で考えると身勝手にも思える話ですが、なんのことはない、これはふだん私たちが誰しもやっていることです。

 特に分かりやすいのは、テキストとのかかわりでしょう。

 日々、スマートフォンをのぞきこみながら、私たちはニュースアプリやポータルサイト、SNSなどでたくさんの記事に出あいます。あるいは企業に属している人なら、会議資料や企画書、報告書、メールなど、膨大なテキストを手にします。

 振り返ってみると分かることですが、その全てを読んでいる人はまずいないはずです。

 しっかり読むものもあれば、ななめ読みするものもあるでしょうし、少し読みかけてやめたり、タイトルだけ見て読まないものもあったりする。

 先ほどの「話を聞く」と同じで、「読もうと思えば読むが、読みたくなければやめてしまう」。それをくり返しています。

 そのとき私たちは受け手として、なにを思い、どう判断しているのか。

 情報に出くわすたびにまず、それが自分にとって「知りたいこと」や「聞きたいこと」「読みたいこと」なのかどうかを品定めするような目で見ているはずです。

 そのフィルターに引っかかるようであれば、かかわってみる。

 そうでなければ、かかわらない。

 ここから分かるのは、受け手が受け入れるのは、伝え手が「伝えたいこと」ではなく、自分が「伝えられたいこと」だということです。

 そして、当然のことながら、伝え手の「伝えたいこと」と受け手の「伝えられたいこと」は、必ずしも同じではありません。「伝えたいこと」を伝えても、受け入れられない可能性が高い。

 伝えるコミュニケーションの構造から考えると、「伝えたいこと」を伝えてもすんなりと伝わらないのは、当然のことなのです。

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