Z世代の「トキ消費」とは? そろいの服でディズニーに行く理由(1/2 ページ)

» 2023年08月11日 07時00分 公開
[廣瀬涼ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

この記事は、廣瀬涼氏の著書『あの新入社員はなぜ歓迎会に参加しないのか: Z世代を読み解く』(金融財政事情研究会、2023年)に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。なお、文中の内容・肩書などはすべて出版当時のものです。

 1990年代に入ると、それまで、モノや記号によって差別化意識や優越感を得ていた消費潮流から、旅行やグルメ、習い事、趣味、ヨガやマッサージ・スパのリラクゼーションなど、アクティビティーと呼ばれるサービス(消費機会)の需要が高まり、人より新しいコト、珍しいコトの体験や経験が人々の消費を活性化していく。

 このように、製品を購入して使用したり、単品の機能的なサービスを享受したりするのではなく、購入したモノ・サービスを使ってどのような経験・体験をするかに重きを置く消費潮流を「コト消費」と呼ぶ。

 大半の消費者が日常生活に必要なモノをすでに所有しており、またインターネットの普及により、価値観が多様化・細分化したことで、「心の充実を満たしたい」という欲求が、人々の消費を促したと考えられる。

 SNSの普及により「コト消費」は人々の強い関心事になっていった。従来「他人にみせ(つけ)たい」と思う対象はヴェブレン財(価格が高まるほど需要も増す高級品:編集部注)であったが、ファッション性のある洋服や流行の食べ物といった、一般消費財に付加価値が加わったモノや、その消費経験が主となっていく。「インスタ映え」のように、写真として映えることや承認欲求を充足させることが求められ、機能性よりもその見た目で選別されることが多くなった。

photo (提供:ゲッティイメージズ)

 このような背景から「SNSにアップされていなければ、何も起こっていないのと同じ」という消費文化が定着しつつあり、特に若者の間では「SNSに投稿することで消費が完結する」という価値観がより一般的となってきた。

 そして、従来は、みせ(つけ)たいと思うものは「高価なモノ」という一つの尺度で価値が見出されていたが、昨今は、万人がうらやましいと思わなくとも、一部の人がうらやましいと思うモノやコトを顕示することが主流となっている。

 このような側面からも、消費されるモノは、道具的価値のみならず、それが持つ付加価値に重きが置かれ、かつその付加価値が多様化してきたといえる。

おそろいコーデは「モノ消費」ではない 新しい消費のカタチ

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.