それでも沖縄に鉄道をつくってあげたい 「ゆいれーる」で効果は証明杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/6 ページ)

» 2023年08月11日 10時08分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 6月30日、ハワイで鉄道路線「スカイライン」が開業した。アロハスタジアムから住宅地のイーストカポレイまで約11マイル(約18キロメートル)だ。これはイーストカポレイとアラモアナセンターを結ぶ計画の一部だ。

ハワイで開通したスカイライン。日立製作所グループの日立レールが車両と運行システムを担当した(出典:ホノルル高速交通局、ギャラリー

 2025年夏に第2期線としてアロハスタジアム〜ダニエル・K・イノウエ国際空港(旧名ホノルル空港)〜ミドルストリートトランジットセンター間が開業予定。31年までにシビックセンターまでが開業予定だ。アラモアナセンターまでの全通も31年の予定だったけれども、資金調達が遅れているため見通しが立っていない。

 日本人を含めた観光客は、国際空港とアラモアナショッピングセンターの直結路線を望んでいるけれども後回しだ。住宅街と大学、ハイウェイジャンクション付近を優先し、次に国際空港とトランジットセンター、ダウンタウンへ延伸する。実はホノルルは自動車による交通渋滞が深刻で、全米でも有数の規模だという。空いていれば15分しかかからない通勤・通学ルートは、慢性の渋滞で45分もかかる。市民の生活のため、公共交通の整備は最優先だ。

 ハワイにはかつてサトウキビを運ぶために鉄道が建設され、旅客営業も行われた。しかし砂糖産業の衰退とトラック輸送の台頭によって、鉄道は保存鉄道を除き1947年に廃止された。一方、1920年代後半から発展した観光産業は戦後の復興政策の中心となって栄えた。現在のオアフ島の人口は約90万人。それが少ない平地に集中するため、人口密度は全米で第4位である。

 こうなるとマイカーによる交通渋滞が深刻になった。そこでハワイ州議会は05年に大量輸送システム構築のため0.5%の消費税追加を承認する。ここからプロジェクトが始まり、18年かけて第1期線が開通した。1947年の鉄道廃止から76年ぶりの鉄道路線復活だ。しかも全米で初めて最新式の全自動運転を採用した。

 1940年代の鉄道終了、深刻な交通渋滞、観光産業中心。この3点でよく似た島が日本にもある。沖縄本島だ。沖縄本島の人口は約129万人、オアフ島の人口は約90万人。ちなみに那覇とホノルルは1961年から姉妹都市の関係である。

スカイラインは、オアフ島のホノルルで建設されている(地理院地図を筆者が加工)
スカイラインの路線図。駅名はハワイ語と英語で表記。パープルラインが開業済み。オレンジラインが23年末までに開業予定、グリーンラインは工事中、グレーラインは建設予定(出典:ホノルル高速交通局、ルートマップ
       1|2|3|4|5|6 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.