「ビッグモーター」不正のウラに何があったのか 長年の“不文律”も一因か高根英幸 「クルマのミライ」(2/6 ページ)

» 2023年08月14日 08時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

店頭価格と見積価格の乖離(かいり)に驚き

 元々保証付の中古車販売は、ディーラー系の中古車販売店が始めたものだった。最初は残存価格を維持するために下取り車を販売するための中古車販売店が開設された。そしてオートオークションにより中古車の流通が柔軟になってくると、一般の中古車店との差別化を図るべく点検整備を入念に行い、保証付で販売を行なうようになったのだ。

 保証サービスは本来、自動車メーカー系の販売店が認定中古車を販売する際に、品質の高さを証明するものとして付帯していた。しかし「保証が付く=壊れない」ではなく、「保証が付く=壊れても追加の費用がない」という論理に置き換えて、中古車業界に保証制度が普及していった。

中古車販売のビジネスモデルに問題も(提供:ゲッティイメージズ)

 そんな中古車業界の闇に触れる機会が昨年あった。筆者は中古車を購入しようと、首都圏の販売店を訪れたのである。目当ての個体は走行距離が少なく、ボディや室内のコンディションも上々で、価格は割安感があった。

 だが実際に店舗を訪れて見積書を作成してもらうと、十数万円と表示されていた諸費用が100万円近くに膨れ上がっていた。内訳を見ると、一般的な諸費用に加えて、長期の修理保証とボディのガラスコーティングが記載されていた。

 修理保証はメンテナンスパックとも言われるもので、1年から3年の期間にクルマの部品が寿命となったり、故障した場合に部品代を無償(工賃は別途必要になる場合がある)で交換してくれたりするものだ。

 パンク保証というものもあり、これはタイヤが1本でもパンクしたら4本とも新品に交換してくれる、という制度だ。しかし筆者が購入しようとしていた中古車には、スタッドレスタイヤが装着されていたので、パンク保証をしてもらっても、購入後に夏タイヤに交換するので意味がない。

 ガラスコーティングは、クルマ磨きのプロが施すもので、とても美しいボディになると言われた。モーターショーなどに展示するクルマを手がけているそうだが、いかに素晴らしい仕上げだとしても、車両価格の1割前後にもなるコーティングではコスパが悪すぎる。屋根付きの駐車場に保管して、洗車やクルマ磨きも楽しむ筆者のようなスタイルだと、プロのコーティングは必ずしも必要ではないのだ。

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