「ビッグモーター」不正のウラに何があったのか 長年の“不文律”も一因か高根英幸 「クルマのミライ」(3/6 ページ)

» 2023年08月14日 08時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

 最終的に、バッテリーとエンジンオイルを新品に交換してもらっただけ。営業マンの面子を保つために選択し、納得できる販売価格でクルマを手に入れることができた。

 だがそのバッテリーも前オーナーが施していた端子部分の封印(サーキット走行などで養生テープを貼る)がそのままだったので、本当にバッテリー交換していたか怪しい(自分で交換するので新品を車内に積んでおいてほしい、と伝えたが、その希望は通らなかった)。

 12カ月点検はサービスだったが、ブレーキパッドの残りを0.1ミリ単位で測定してくれているわりには、ディスクローター(タイヤの回転を止める働きをする部品)の異常なほどの摩耗(おそらく前オーナーが別のクルマのローターとすり替えた)は指摘しておらず、部品交換を避けるために摩耗を無視されたようだ。

車検整備はディーラーをはじめ、整備業者にとって利益の柱になる業務だ。しかし効率化を求めるあまり検査項目を省略したり、交換不要な部品まで交換して請求したりと、トラブルも多いようだ

 このことは購入後すぐに、タイヤホイールを交換する際に脱着することで判明した。12カ月点検の記録簿には記載がなかったこともあって中古車店に連絡したが、有償の保証制度に加入していないため、3カ月のパワートレイン周りだけの保証ということで相手にしてもらえなかった。

 自分でディスクローターを購入し、交換したため有償保証よりも格段に割安に修理できたからいいが、12カ月点検をしても摩耗限界を超えたディスクローターのまま平気で納車するような業者がいることが、明らかになったのである。

 しかしこうしたことは中古車業界では珍しいことではないようだ。自分で点検したり、別の整備業者に依頼するのが面倒だったり。そんな人は長期保証を契約するよう誘導されるのだ。

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