新時代セールスの教科書

グーグル出身「営業のプロ」が解説 組織力を上げる“3つの会議”「日本式営業」からの脱却(2/2 ページ)

» 2023年08月24日 08時00分 公開
前のページへ 1|2       

1.双方向な営業会議

 まず、多くの企業で取り入れられていると思われる営業会議を、メンバーの育成にも役立つ場へ改善していきましょう。重要な点は、営業会議を一方的な報告ではなく、双方向的で前向きな議論の場として捉えることです。

 一般的に営業会議では、(1)契約件数や売り上げなどの業績の実績や見込み、(2)現状の業績の理由や考察、(3)今後の取り組み方針、といった内容についてそれぞれの営業が上司に報告することが多いでしょう。もちろん営業状況を関係者間で共有することは重要ですが、営業メンバーが会話するのは直属の上司のみで、他の関係者の前で進捗の悪さを責められるだけの場となってしまっているケースが散見されます。

 メンバーの育成に主眼を置くのであれば、個人を非難することよりも参加者全体での議論を重視して営業会議を運営する必要があります。具体的には、メンバーが報告した数字を基に進捗や見込みの悪さの原因を深掘りする、個人の努力だけでは改善が難しい課題があればその対策を検討する、といった議論ができるとよいでしょう。

 完成した報告を受けるための会議ではなく、報告内容をブラッシュアップするための会議として設定し直すことで、営業会議に対する営業の姿勢も前向きになり、より建設的になるはずです。

2. メンバーが助け合う進捗会議

 次に、現在進行中の案件に対する活動を改善させるため、週次で進捗会議を開くようにしましょう。重要な点は、営業が自分の案件の課題を一人で抱え込まず、チームと結果だけでなくその過程と悩みを共有することでチーム一丸となって課題を解決する場として進捗会議を位置づけることです。

 進捗会議では、上司がメンバー全体の成果を把握するのではなく、メンバー自身が直近の業務の進め方で迷わないように互いにサポートし合うことが大事です。参加者は少人数、できれば3人程度の固定メンバーで前週のうまくいった点、やり残した点、課題、今週注力するアクションなどを議論しましょう。このようなやり方によって、互いの状況を理解したコミュニケーションが可能になります。

 また、営業メンバーの中に新人がいる場合、教育係の先輩と同じグループに入ることで、より教育の効果が上がることが期待できます。

3. ナレッジを共有する能力開発会議

 最後に、より全般的なパフォーマンス向上やベストプラクティス共有のために、能力開発会議を定期的に開催しましょう。ポイントは、デキる営業に営業のコツやノウハウを抱え込ませず、チームに広く共有する場として会議を設定することです。

 会議では「商談を進めようとしてもキーパーソンにつながらない」「顧客側の動きが鈍く進展しない」といった日々の営業活動の悩みを率直に話し、それに対して参加者が一緒になって考え、自分の経験を踏まえて助言し合います。業績会議とは異なり、営業成績はいったん脇に置いて考えるようにすることも、悩みを話しやすくするために重要な点です。

 この会議では、特にトップセールスの持つコンピテンシーを知り、どのようなプロセスで活動しているのかを共有することで、全体のレベルを押し上げる効果が期待できます。また、人材が流動的であるという現状を踏まえると、それぞれが持つノウハウを定期的に他のメンバーと共有する場を用意しておくことで、それらが失われてしまうリスクを減らすことにもつながります。さらに、個人商店化しやすい営業が一緒に悩みを解決する体験を持つことで、チームとしての一体感を醸成できることも大きなポイントです。

 これまで、現在の営業組織が抱える課題を踏まえて、営業の組織力を底上げする3つの会議をご紹介してきました。着手しやすいものから取り入れていただき、ぜひご自身の所属する営業組織のレベルアップにお役立てください。

筆者プロフィール:水嶋 玲以仁 グローバル・インサイト合同会社 創設者兼CEO

インサイドセールスの実務全般について、20年に及ぶ経験を持つ。そのうち16年間は、世界有数のIT企業でBtoB及びBtoCのインサイドセールス、営業チームの発展と管理業務に携わる。(Dell で7年、 マイクロソフトで6年、Googleで3年)。その後、JTB、NEC、ソフトバンクなど日本企業のコンサルティングの実績を持つ。著書に「インサイドセールス究極の営業術」(ダイヤモンド出版)「リモート営業入門」(日経文庫)「実践営業デジタルシフト」(日本経済出版)。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.