新型コロナが2類から5類へと移行し、世の中が脱コロナの機運に包まれつつある中、テレワーク環境を整えられずにいる会社にとっては、気兼ねなく出社回帰を選択しやすい空気になりました。統計でテレワーク実施率が下がり続けていることも、出社回帰の判断にお墨付きを与えているのかもしれません。
また、テレワーク環境を整えている会社も「対面コミュニケーションを大切にして業務連携の効率を高めたい」「みんなで集まって一体感を高めながら、会社のカルチャーを醸成していきたい」などの理由から、ハイブリッド勤務を選択したり、出社回帰したりするケースが増えてきています。
しかし、同じ出社回帰でも、テレワーク環境が整っていない会社は常に3つのリスクを抱え続けている点において、環境を整えている会社とは決定的な差があるのです。同じように「対面コミュニケーションが大切」――などの理由で出社回帰するとしても、テレワーク環境を整えなくていい理由にはなりません。
(1)新種のウイルス一つで事業を停止せざるを得ない可能性
(2)災害時の出社要請など社員を危険な目に合わせるリスク
(3)エンプロイメンタビリティ(雇用能力)が弱まるリスク
政府は、かねてテレワークを推進してきました。05年に総務省や厚生労働省などが呼びかけてテレワーク推進フォーラムを立ち上げてから18年が経ちます。しかし長い間、テレワークはどこか現実味のない施策として映ってきた感がありました。
ところが世界中がコロナ禍を体験したことで、パンデミックの中でも社会を回し続けたテレワークのメリットをいまは誰もが実感しています。同時に、会社がテレワーク環境を整えないことのデメリットも身をもって認識しているはずです。
それなのに、教訓を生かすことなく「出社回帰している会社が多いから大丈夫だ」とテレワーク環境を整えないまま高をくくっているような会社は、会社存続に関わる重大なリスクに備える責任を果たせていません。もし第2、第3のコロナ禍が発生した際「なぜ環境を整えていなかったのか」と問われたら、一体何と答えるのでしょうか。
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