また、操作に対するフィードバックがあるということは、運転のしやすさにも通じます。マツダに取材したところ、EVサウンドのあるなしで比較すると、EVサウンドありの方が、ドライバーはクルマの速度を上手に調整できたとか。
もちろん、アクセル操作による加速度の変化もフィードバックとなります。それにEVサウンドを追加した方が、よりドライバーはクルマの動きを実感することができるというわけです。
もう1つ考えられるEVサウンドの価値は、差別化=ブランディングです。今のところ、EVサウンドは自動車メーカーが独自に作ったものを使用しています。マツダ「MX-30EV」はモーターの拡張版のようであったのに対して、日産「アリア」やメルセデス・ベンツのEVサウンドは宇宙船のようなSFチックなモノでした。BMWはEVサウンドの作成には、アカデミー賞の受賞経験がある映画音楽の作曲家が関わっているとか。つまりメーカーごとに異なるEVサウンドが、そのブランドの魅力の1つとなる可能性があるのです。
ただし、EVサウンドは始まったばかり。まだまだ「EV=静か」であることに重きを置くユーザーも多いようです。実際、EVサウンドを備えていたマツダ「MX-30EV」は、一部改良によりEVサウンドの音量を下げています。「MX-30EV」のEVサウンドは常時作動するもので、サウンドなしを選択することができず、一部ユーザーから不評を買ったのが理由だとか。ちなみに、日産「アリア」は、一部の走行モードのときだけEVサウンドが聞こえます。
このようにEVサウンドはまだまだ手探り状態といえるでしょう。そもそもどんな音がいいのか? 音の種類は1種類でいいのか、それとも複数がいいのか? 常に使うのか? それとも特別な走行モードの時だけ使うのか? など何も定まっていません。「EVサウンドの定番」がそろうのには、まだまだ時間がかかるはず。新しいEVに乗る際は、どんなEVサウンドが用意されているのかにも注目です。
1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。
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