さて、そこで再び想像していただきたい。こういう問題が発覚したからといって、損保ジャパンはすんなりと「過剰なノルマ」をやめることができるだろうか。日本企業の多くがいまだに年功序列の賃金体系を残している中でも、損保業界では以前から成果主義型賃金が常識だし、人口減少などで自動車に乗る人も減っていく中で、これまで以上に成果をゴリゴリに求めていく必要もある。
そう、一度染み付いた「過剰な成果主義」は、そう簡単に全否定することはできないのだ。だが、自社や代理店でそれをやってしまったらまた同じ過ちの繰り返しである。そこで活用したのが、ビッグモーターのような「結果を出すならなんでもやるヤバい取引先」ではなかったか。
『産経新聞』によれば、通常は損保ジャパンの調査員が行う損害調査を、ビッグモーターでは省略していたという。同社はビッグモーターに37人の出向者を送り込み、恫喝LINEで注目された、兼重宏行前社長の長男で前副社長の宏一氏も損保ジャパン前身の日本興亜損保に在籍していた。
つまり、両社は「結果を出すならなんでもやるヤバい取引先」と「結果さえ出すなら取引先の不正に目をつぶる大企業」という癒着関係だった可能性があるのだ。
このような話をすると決まって、成果主義を掲げる会社はたくさんあるが、テレビ局や損保ジャパンのようにヤバい会社をかばうほどモラルハザードが起きていないので、成果主義が悪いわけではないというようなことを主張する人がいる。
筆者も成果主義が悪いとは思わない。競争社会の中で営利企業はある程度、成果を求めるのは当然だ。問題はそこではなく、先ほどから言っている「閉鎖的な世界でのカニバリ」だ。こういう環境にいる企業は健全な競争原理が働かないので、成果主義にのめりこむうちに、「員数主義」というモラルハザードが起きてしまうのだ。
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