損保ジャパンとテレビ局はなぜ似ているのか 「ヤバい取引先」をかばう会社の特徴スピン経済の歩き方(3/7 ページ)

» 2023年09月05日 11時07分 公開
[窪田順生ITmedia]

モラルハザードが起きてしまう

 大企業からすれば、こういう取引先と親密な関係を築けば、コンプライアンスだなんだと面倒なことを気にすることなく、「結果」が得られる。その結果を出すために現場で不正が行われていても、パワハラやら性加害がまん延していたとしても、「他社」の問題なのでリスクはない。もしそれが大事件になっても「知りませんでした」とすっとボケることができる。

 こういうもたれあいは取引先からしてもありがたい。とにかく結果さえ出し続ければ、大企業から切られることはないので、現場の労働環境やコンプライアンスなど気にしなくていい。人を使い捨てにしようが何をしようが、結果を出すことだけに集中すればいいので経営もしやすい。

損保ジャパン、ブランドスローガンに込めた意味(出典:損保ジャパン)
ビッグモーター社による自動車保険金の不正請求への対応について(出典:損保ジャパン)

 もうお分かりだろう、この取引先こそが、テレビ局におけるジャニーズ事務所であり、損保ジャパンにおけるビッグモーターだ。

 テレビと損保という異業種ながら、「ムラ社会の中でパイを奪い合っているうちに、結果を出せば何をしてもいいとモラルが崩れていく」という点においては、両社は驚くほどよく似ている。

 例えば、分かりやすいのは03年10月に発覚した視聴率買収事件だ。日本テレビのプロデューサーが、ビデオリサーチ社のモニター世帯を調べて、番組アンケートや機械の点検を装って金銭を渡して視聴を依頼したのだ。

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