これは簡単に言えば、「数の帳尻合わせ」であり、旧日本軍でよく使われた言葉だ。例えば、部隊の装備品などの検査で数が合わなかったときなど、鉄拳制裁とともにこんな感じで使われた。
「バカヤロー、員数をつけてこい」
日本軍は員数さえ合えば、実態が異なっていても「問題なし」というモラルハザードがまん延していた。そして、戦局が悪化すればするほど、「員数合わせ」にのめり込んでいく。
過剰なノルマをごまかして、実際はボロ負けしているのに大本営は戦績をかさ上げして発表した。「結果を出せば何をしてもいい」という過剰な成果主義に取りつかれているので、神風特攻や人間魚雷など、他国の軍隊ではあり得ない非人道的な作戦が次々と実行に移される。ついには未成年の子どもまで戦地に駆り出して、「玉砕」を強いるという異常な戦い方をやり出す。
実際に従軍経験のある評論家の山本七平氏によれば、敗戦直後、多くの軍隊経験者が、日本軍の敗因は何かと問われたら「員数主義」を挙げたという。
ビッグモーターやジャニーズ事務所というヤバい取引先を放置していた、損保ジャパンや民法キー局の中で、今回の問題の原因は何かと問われたら、おそらく多くの社員は「過剰なノルマ」を挙げるだろう。軍隊と営利企業という違いはあるが、組織が暴走して現場のモラルが壊れていくプロセスは恐ろしいほどよく似ているのだ。
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