大手企業が、自社の退職者とつながり続けるための「アルムナイ(卒業生)ネットワーク」構築に乗り出している。人手不足が深刻化しているので、会社にいつか戻ってきてほしいという狙いもあるが、アルムナイが社外で得た知見をさまざまな場で活用するケースも増えてきているようだ。
では、こうした企業は具体的にどういった活動をしているのだろうか。2022年9月にアルムナイネットワークを立ち上げた三井住友海上火災保険(以下、三井住友海上)のケースを取材した。
同社が運営しているのは「MSビジネスネットワーク」で、登録者数は約300人だ(23年7月時点)。そのうち、ネットワーク内で主体的に発信を行い、企画を推進するアルムナイである「アルムナイサポーター」が6人存在する。年齢は20歳後半〜50歳と幅広い。それぞれ、コンサルティング業界、保険業界、IT業界などに所属している。
同社のネットワークには、アルムナイ同士で「会社の『今』を知る」「自分に興味のあるテーマでさまざまな意見交換をする」「新たな繋がりを得て、現在のビジネスにつなげる」という3つの軸がある。コミュニティー内では、アルムナイ同士が自由なメッセージを交換したり、イベントの告知をしたりできるようにしているという。
各種トークグループも運営している。ビジネス軸では「近況共有・情報交換ルーム」「スタートアップ・ベンチャー企業ってどう?」「三井住友海上 中途採用情報のルーム」「兼業・副業・ビジネス連携ルーム」などがある。「飲み好き&グルメ好き」という私生活を楽しもうという場も。
三井住友海上では、22年の9月と11月にそれぞれオンライン交流会を実施している。同会では、アルムナイネットワークの構築に取り組む狙いを説明したり、コミュニティーの活用方法などについて意見交換をしたりした。また、アルムナイから「転職時に感じたカルチャーギャップ」というテーマでコメントを寄せてもらった。
23年8月上旬には、初のオフラインイベントを開催した。約30人のアルムナイが集まり、現役社員と交流をした。オンラインでの交流会と比べ、その後のビジネス連携につながりやすい傾向がみられるという。
このように、同社が退職者と交流する中で「辞めてしまったら、二度と三井住友海上の敷居はまたげないと思っていた」という声も寄せられた。退職した人をネガティブに扱うつもりはなかったのだが、認識のギャップに気づかされたという。
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