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新卒採用セミナーで「元社員」が古巣を語る 三井住友海上が退職者との“縁”を大事にするワケアルムナイネットワーク(2/3 ページ)

» 2023年09月06日 05時00分 公開
[昆清徳ITmedia]

アルムナイネットワークに取り組む理由

 なぜ、同社ではこうした取り組みに注力しているのだろうか。理由はいくつかある。

 1点目は、元社員を再雇用しやすくすることだ。三井住友海上では得られなかった専門性や知見を獲得したアルムナイは、同社のことをよく知っているので、再雇用前後のミスマッチが少なかったり、即戦力になりやすかったりといったメリットが考えられる。ネットワークを開設した後に、再雇用求人への応募があり、実際に戻ってきたケースもあるという。

アルムナイ(元社員)は中途採用の選考過程で優遇

 2点目は、新たなビジネスアイデアを生み出すためだ。人口減少・少子高齢化の進展により、自動車保険といった伝統的な市場は中長期的に縮小していくことが想定されている。一方、損保業界を取り囲む環境変化は激しい。デジタル化や気候変動などの影響を強く受けており、新たなリスクやそれに伴う保険ニーズが生まれていると同社は分析。新しいビジネスアイデアを考案するには、多様な視点や価値観が重要で、社外カルチャー経験のあるアルムナイとの接点は貴重だと考えてる。

 具体的にどういった連携が考えられるのか。同社では21年、道路損傷の早期発見を支援するサービス「ドラレコ・ロードマネージャー」の提供を開始している。これは、グループ全社員からデジタルを活用することで社会課題につながる新たなビジネスアイデアを募集し、実現可能性がある案件については会社が支援して事業化する「チャレンジプログラム」から生まれたものだ。

 このチャレンジプログラムの審査員としてアルムナイが活躍している。アルムナイからは、在職時に得た保険に関する深い理解と現職のM&A経験で培った事業開発に関する知見に基づいた有効なコメントがあったという。社員からも「非常に良い機会だった」「勉強になった」という声が寄せられたのだとか。

 元社員なので、現社員とのコミュニケーションギャップが少ないというメリットがある。退職後に起業したり、専門人材になったりした元社員と協業する場をつくることで、オープンイノベーションを実現したい考えだ。

 3点目は人材の採用力向上だ。例えば、24年度入社向けの新卒採用セミナーには、同社の営業部門に所属した後、スタートアップ企業に転職した元社員が登壇。同社での経歴、退職した経緯、退職後のキャリアだけでなく、退職後に感じた同社の良いところ・悪いところもざっくばらんに解説したという。こうした取り組みは。入社後のギャップを減らすことに役立つと同社は考えている。

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