ディズニーチケット「最大1万円超え」 かえって満足度が「高まりそうな」理由廣瀬涼「エンタメビジネス研究所」(1/2 ページ)

» 2023年09月10日 09時00分 公開
[廣瀬涼ITmedia]

 東京ディズニーシーで2024年春に開業予定の新エリア「ファンタジースプリングス」。「魔法の泉が導くディズニーファンタジーの世界」をテーマにした8番目のテーマポートだ。当初は2022年に開業予定だったが、2度延期しており、ファンは着々と建築されていく新エリアの姿を見ながら心待ちにしてきた。

 ファンタジースプリングスへの投資金額は約3200億円。東京ディズニーリゾート最大級の拡張計画といえる。ちなみに東京ディズニーシー全体の建設費は約3350億円(ホテルミラコスタの建設費を含む)だった。今回の投資金額の大きさが分かるのではないだろうか。

photo ファンタジースプリングスには、ディズニー映画『アナと雪の女王』『塔の上のラプンツェル』『ピーター・パン』を題材とした3つのエリアが広がり、4つのアトラクションや3つのレストランと1つのショップ、ディズニーホテルが開業する予定だ=画像は公式サイトより
photo 開業予定の「東京ディズニーシー・ファンタジースプリングスホテル」。最上級クラスとなるラグジュアリータイプの客室「グランドシャトー」も用意されている=画像は公式サイトより

 今回の拡張では、ホテルの開業も予定されている。特筆すべき点は、既存のホテル「ディズニーランドホテル」「ホテルミラコスタ」「アンバサダーホテル」と同クラスのデラックスタイプに加え(419室)、最上級クラスとなるラグジュアリータイプの客室「グランドシャトー」(56室)が提供されることだ。

 パークが拡張され、新しい体験が提供される一方、ディズニーリゾート訪問中の滞在費用は高騰していく。

photo (図1)東京ディズニーリゾートのチケット価格の推移=筆者作成

 図1は東京ディズニーリゾートのチケット価格の推移である。もちろん物価変動や時代背景を考慮に入れていないため、数字だけで評価するのは安直だが、1983年の開園当時と2023年9月を比較すると、3900円から9400円と5500円も上昇している。そんな過去と比べなくとも、19年からわずか4年間で1900円も増加しているのだ。

 ちなみにオリエンタルランドがニューファンタジーランドの拡張を発表したのが17年、ファンタジースプリングスの開発を発表したのが19年。新しいエリアを開発するとチケット代が上昇する傾向がある。

photo (図2)10月1日以降、1デーパスポートの価格は最大1万円を超える=筆者作成

 10月1日からはさらに値上げする。現在の7900円/8400円/8900円/9400円の4パターンの価格変動制から、6パターンの価格変動制となり、最大料金は1万900円になる。当然ながら投資には資金がかかるわけで、その資金を捻出するためには売り上げを増加させる必要がある。その売り上げは消費者からの支出そのものであり、ディズニーも例外ではない。

 オリエンタルランドが発表した24年3月期第1四半期決算の資料を見ると、テーマパーク事業の売上高は、前年同期比366億円増の1165億円となっている。来園者1人当たりの売上高が増加し、中でもアトラクション・ショー収入と商品販売収入が伸びたことが要因だ。同資料によると、アトラクション・ショー収入は、低価格帯チケットの構成比が増え、減少の影響があったものの、ディズニー・プレミアアクセスの増加により前年同期を上回ったという。

photo アトラクション・ショー収入は前年同期を上回ったという=オリエンタルランドの決算説明資料より

 ディズニー・プレミアアクセスとは、22年5月から導入した時間指定予約サービスのこと。スマホアプリで1回2000円(施設によって値段の変動あり)を支払うと、対象のアトラクションの入場時間を指定して予約できるシステムだ。

 このように、来園者の負担が増えるチケット価格上昇や、有料サービスの導入に踏み切らなくてはいけない背景には、新エリアの開発がある。これに加えて、入場者数も大きく影響していると筆者は考える。

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