リテール大革命

人か、ロボットか 「餃子の王将」と「大阪王将」が異なる一手 厨房で起きている見過ごせない変化長浜惇之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)

» 2023年09月12日 10時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

 向上した調理技術を生かして、プレミアムメニューの「極王シリーズ」(極王炒飯、極王天津飯、極王天津麺、極王焼きそばの4種)、通常メニューのハーフサイズで提供される「ジャストサイズ」などを開発。メニュー数を増やすことで、舌の肥えた人、少なめの量を希望する人など既存以外の客層を開拓して、顧客層の拡大に寄与している。

「極王シリーズ」の焼きそば(同前)
ジャストサイズの餃子(同前)

 餃子の王将では、全国に4カ所ある工場で、餃子や麺を製造して、各店舗に配送している。それ以外は全て店内調理でまかない、肉や野菜のカットも現場で行っている。餃子も、以前は工場で製造した皮と餡を各店に配送して、店内で成型していた。しかし、あまりにも時間がかかり、店員が疲弊するため、工場で成型してチルド配送する体制に改めた。

 このような業務改革によって店員が調理や接客に集中できるようになったのも、業績の向上に一役買っている。

「標準化」の一歩先が課題か

 さて、他の中華チェーンに目を移してみると、東京都を中心に神奈川県・埼玉県・長野県に20店ほどを展開しているKVC一番館(東京都中野区)の「中華食堂一番館」は、炒飯調理機「ロボシェフKVC460」を活用している。

06年にロボットを導入した中華食堂一番館(同前)

 ロボシェフKVC460は、業務用機器メーカーのエム・アイ・ケー(さいたま市)と共同開発。調理スタッフが鍋を振らなくても、材料を手順通りに投入するだけで本格的な炒飯が完成するのがメリットだ。炒飯だけでなく、中華料理に欠かせない炒めものにも対応している。調理能力が乏しいアルバイトでも、肉や野菜などの炒めを安定的に仕上げることができる。どんな料理でも、3分以内に顧客へ提供することを目指して06年から導入。今では全店舗で活用している。

 中華食堂一番館が、ロボットの導入によって料理を標準化できたことを参考にすると、大阪王将の将来像をある程度予見できる。大阪王将も、料理の出来栄えを標準化するのは間違いなくできる。店による味のバラつきは今後、解消されていくだろう。一方で、調理技術を磨く機会がなくなるデメリットもある。店員のモチベーションをどのように保つかという、新たな課題が生じてくる。合理的な調理システムを手にした中華食堂一番館は成長の頭打ちを迎えており、この伸び悩んでいる理由を大阪王将は突き詰めてほしいものだ。

中華食堂一番の半炒飯・かけらーめんセット(同前)

 人間が料理しないことで「料理に面白みが欠けるのではないか」という懸念もある。しかし、機械で大量に作った冷凍食品の炒飯がこれだけ市民権を得ているのだから、やり方次第で解決できると筆者は考える。

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