中華とは異なるが、隣接分野である「ちゃんぽん」のチェーンとして、577店(23年2月期末時点)を展開する「リンガーハット」では「自動鍋送り機」を導入。下調理したちゃんぽんを鍋に入れてスイッチを入れると、自動的に3台連結したIH調理機を順番に鍋が送られていく。店員は最後のIH調理機へと鍋が送られた後、盛り付けを行う。
各IH調理器ごとに攪拌・投入・加熱の工程を割り振り、同じ火加減で調理が行える点がメリットだ。加熱のムラがなくなり、個人のコツに頼ってきた調理の技術を数値化でき、誰が厨房に立とうが均一な品質で、顧客に提供できるようになる。
同じく導入している「IH自動野菜炒め機」では、具材を入れてボタンを押すだけで、釜部が自動で回転してまんべんなく食材を炒められる。このようにリンガーハットでは、厨房の自動化が進み、個々の店舗が小さな工場のようである。日本語もおぼつかないような外国人を雇用し、かつ省人化しつつ、品質を保った料理を安定的に提供するには、リンガーハットくらい思い切った取り組みをしないといけないのかもしれない。
ロボット調理へ本格的に取り組む大阪王将に対して、あくまで人力による調理技術の研鑽(けんさん)で味の向上を目指す餃子の王将。どちらが正解なのかは正直、分からない。例えば、都市部から離れると、顧客のコスト意識が強まり「安さが正義」派が増える傾向にある。都市部では多少価格が高くてもこだわりが評価されるが、地方ではそうなりにくい。店舗立地によっても戦略の成否は左右されるのだ。
両チェーンは立地も顧客層もこれまで似ていたが、どの顧客層をメインのターゲットに選ぶかで、店舗の在り方が大きく分かれていく可能性が高い。大阪王将では町中華を意識して、あえて他チェーンが狙わない空白地帯にリロケーションしているように見える。それがロボット調理とどのような相乗効果をもたらすか。興味深い展開になってきた。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング