栃木vs静岡vs宮崎……  最も作って食べてる「ギョーザ県」はどこ?「FUMA」企業データ分析(1/2 ページ)

» 2023年09月19日 09時00分 公開

 最も餃子を作って食べている「ギョーザ県」はどこなのか? 10年以上、毎日全国の企業データを眺めている筆者が調査・考察してみました。

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 筆者は、300万人以上が利用している完全無料の企業リスト作成サービス「FUMA」を運営しています。全国160万社の有力企業リストと独自に付与した4万種類の関連タグ(※1)に家計調査データ(※2)を加え、ランキングを作成しました。

(※1)関連タグとはFUMAが独自開発した各企業の属性を表すキーワードです。例えばトヨタ自動車なら「電気自動車」「アメリカ」「マツダ」日清食品HDなら「ラーメン」「冷凍食品」「海外展開」などの関連タグを付与しています。メイン事業以外のサブ事業や業態などに関連するキーワードも多数収録しており、データベースに収録された全国の有力企業に対して、4万種類以上のキーワードをのべ1000万語付与しています。

(※2)今回は家計調査データとして、総務省統計局の家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング (2020〜22年平均)を利用して、各県庁所在市の1世帯当たり品目別年間支出金額を各都道府県の消費傾向データとして扱っております。なお、今回はギョーザ特別枠として静岡県のサンプルは静岡市ではなく浜松市を採用しております。

「宇都宮餃子」擁する栃木が他を圧倒する! 生産ランキング

 まずは生産サイドから「餃子製造」関連事業を展開する企業数を見ていきます。人口や経済規模と関係なく比較するため「各都道府県の有力企業1万社当たりに餃子製造関連企業が何社あるか」を集計した結果がこちらです。

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 予想通り、栃木(宇都宮)、静岡(浜松)、宮崎(宮崎)の3強は“作る”方でも上位にランクインしてきましたが、中でも宇都宮餃子の栃木が圧倒的な強さで首位を獲得しました。

 その理由として宇都宮餃子は他と比べて外食が主戦場であり、宇都宮市が1991年に「宇都宮餃子」を商標として登録、JR宇都宮駅前には餃子像が設置されるなど、既に地元の観光産業として成立しているので、複数企業が専門店として共存できるパイがあると考えられます。

 また、宇都宮餃子の現存する最古の店として58年に創業した「みんみん」が有名ですが、創業者の鹿妻三子(かづまみね)さんが戦時中、北京に住んでいた時に現地でお手伝いさんに教わった家庭料理の餃子を元に作られています。

 2位の静岡の浜松餃子も中国からの帰還兵が、戦後の物資不足の中でも手に入れやすい小麦と野菜を利用して店を出したのが始まり、3位の山形は23年の関東大震災で被災した横浜中華街の華僑の人達が移住してきたことをきっかけに「ラーメン県」になったと言われているので、そこら辺の本場中国とのつながり方の影響は大きそうです。

 なお、鉄鍋からそのまま熱々を一口で次々頂く、おつまみに最適な「鉄鍋餃子」の福岡(博多)もきっちり4位にランクインしています。

宮崎の独自文化が3強時代の到来を引き寄せた! 消費ランキング

 次は家計調査データを利用して、消費サイドからデータを見ていきます。なお、この総務省の家計調査における「ぎょうざ」消費金額ランキングは、もともとの餃子人気と宇都宮市vs浜松市vs宮崎市の官民一体のライバル対決の面白さと相まって、さまざまなメディアでも取り上げられるのですが、少し前提条件にも触れておきます。

 まず、この調査で支出金額として扱われているのは、基本的にスーパーなどで購入した総菜の焼き餃子といわゆる生餃子と言われる冷蔵餃子が対象なので、外食の餃子(テークアウト含む)や冷凍食品の餃子は含まれていないため、この金額が=地域の餃子の消費というわけではないということです。

 また、家計調査は都道府県庁所在地と政令指定都市が対象のため、円形に焼いた餃子の真ん中にもやしを添えたスタイルが魅力的な「浜松餃子」も、2007年に浜松市が政令指定都市に選定されたためダークホースとして浮上、翌年から宇都宮vs浜松のライバル対決という構図が成立したという経緯があったりします。

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 やはり、他県とは一線を画す3強の激しい争いになりましたが、静岡と栃木を抑えて宮崎が首位に立ちました。21年に初めて全国トップに躍り出るなど、08年から続いていた宇都宮餃子vs浜松餃子の対決に割って入った、新興勢力・宮崎。

 元々、宮崎はお隣の鹿児島に続く全国有数の豚の飼育数を誇る県であり、キャベツなど野菜の産地でもあるため、そうした豚肉の美味さや取り扱いをよく知る精肉業から「ぎょうざの丸岡」のような人気餃子店が輩出されてきました。

 また、その消費に更にバフをかけるのが

「仕事帰りに焼きたての餃子を持ち帰り、あるいは生餃子を買って夕食にする」

「それだけに留まらず、お気に入りの店で大量に買って冷蔵庫に常備する」

「更に親戚や友人にお土産として持参する、近所の人にお裾分けとして配る」

という独自のギョーザ愛です。

 そして、この餃子文化と上記で触れた家計調査の支出金額カウントは噛み合いが良いというのも、宮崎の躍進の要因と言えます。

 なお、4位には「餃子の王将」を育んだ京都、5位には日本一の豚の生産地でキャベツや白菜の生産もトップクラスの鹿児島が入っていくるわけですが、個人的に凄みを感じるのは生産に続いて消費でも2位にいる静岡です。

 なぜなら上述の通り、宇都宮餃子は地元の観光産業として、宮崎餃子は地産地消やブランド向上といった感じで、官民一体となって盛り上げていこうというようなビジョンや展開が見えてきて、その取り組みは素晴らしいことだと思います。

 ですが、浜松餃子からは「単純に餃子が好きだから、作って食べてたら気づけば上位に」的な雰囲気も感じてしまい、逆に確かな存在感を感じてしまいます。

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