下段は、適切な行動をとるためのスキル/知識の習得(営業の育成)です。上段の営業活動をスムーズに進めていくための「How(方法/やり方)」の強化をします。
営業の育成の「Plan」は、上段の営業活動の「Plan」を受け、あるべき営業スキル体系の整理と育成テーマの把握から始まります。このPlan同士をつなぐ部分で重要なのは上段の「目標達成の柱」です。例えば、「ゴール達成の柱」が新規顧客獲得で数値目標を達成しようとしているのか、既存顧客からのクロスセルやアップセルで目標を達成しようとしているのか、重点顧客の業界はどこか、などによって必要なスキル体系が異なってきます(スキル体系のまとめ方は書籍をご参照ください)。
あるべきスキル体系を整理したら、スキルアセスメント(以下、アセスメント)をおこないます。営業の得意なことと不得意なことを定量的に測ることができます。例えば、既存顧客の深耕において「顧客の重点投資領域を把握し、提案する」というスキルが必要だと設定した場合、各営業がどのくらいのレベルでできているのかを測ります。例えば「提案すべきテーマが分からない、実践できていない」ということが5段階のスコアで1だったとすると、定量的に見てなんらかの打ち手が必要であることが分かります。そうすると重点的に取り組むべき育成テーマが明確になります。
育成テーマが見えたら、具体的な育成施策(Do)を提供します。施策の柱は4つで、「トレーニング(学習)」「コーチング(実践促進)」「ツール/ナレッジ(活動の効率化)」「システム(データによる可視化/共有化)」です。アセスメントで明確になった育成テーマの優先順位にもとづいて施策を展開していきます。
最後は、育成結果の検証(See)です。「育成指標管理」では、各営業のトレーニングの受講率、スキルレベルの改善状況、ツールの利用状況など、育成施策に関わるデータを分析し、育成の進捗状況を把握します。
ここまでで、育成のPDSサイクルがつながり、データで育成の進捗が見られるようになります。ちなみに、このPDSサイクルの整備状況は、多くの場合は特定の「Do」にとどまっている印象です。例えば外部の「e ラーニング」を契約し、社員の受講率を集計して終わりだったり、一般的なアセスメントを実施してスコア管理していたりすることが多いように思います。どちらの管理も必要ですが、営業成果にフォーカスする場合、実務の観点からもう一歩二歩踏み込む必要があります。これも後の節で詳しく解説します。
ここまで上段の営業活動と下段の育成のPDSサイクルを見てきました。セールス・イネーブルメントというのは、営業成果(Plan)を起点に上段下段でそれぞれ施策を展開し(Do)、最終的に営業成果と育成のデータを突き合わせてその効果を検証し(See)、営業の成果と育成をつなぐ取り組みになります。
上段ではSFAを活用して営業活動管理をおこなっている、下段についてはeラーニングを実施している、という企業は多いかもしれませんが、それだけでは十分とはいえません。
次の節からは、「Plan」「Do」「See」それぞれでおこなうゴール設定や施策や検証方法について、詳しく解説していきます。
株式会社R-Square & Company 代表取締役社長/共同創業者。
大学卒業後、日本ヒューレット・ パッカードに入社し法人営業を担当。その後、 船井総合研究所を経て、外資系人事コンサルティングファームであるマーサージャパンで人事制度設計、組織人材開発のコンサルティングに従事。その後、セールスフォース・ドットコム入社。セールス・イネーブルメント本部長として、日本および韓国の営業部門全体の人材開発施策、グローバルトレーニングプログラムなどの企画・実行を統括。イネーブルメント部門の規模を4倍に拡張し、グローバルトップの営業生産性を実現。
2019年同社を退社し、セールス・イネーブルメントに特化したスタートアップ、R-Square & Companyを起業。大手企業から中堅企業まで数々の企業のイネーブルメント組織の構築に尽力。イネーブルメント分野の日本での第一人者。
著書に『セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方』(かんき出版)がある。
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