このように競合サービスの中でHuluはあらゆる項目で中途半端な立ち位置にあったのが実情だ。そんなHuluの逆襲の一手として期待されるのが、スタジオジブリ作品の配信だ。SNS上では「ジブリ作品がHuluで見放題になったら熱い」など期待する声が多数出ている。
これまで、日本国内では作品のサブスク配信を解禁していないスタジオジブリ。子会社となったことでHulu独占配信を実現できれば、利用者獲得の大きな武器となる。日テレ側がスタジオジブリを説得できるかが実現の鍵を握るだろう。
スタジオジブリ作品のサブスクサービスでの配信は、国外ではすでに始まっている。ネットフリックスは20年2月に『千と千尋の神隠し』『もののけ姫』『アリエッティ』『魔女の宅急便』『となりのトトロ』など21作品を配信すると発表し、大きな話題になった。
これについてスタジオジブリの鈴木敏夫社長は「宮崎駿でいうと、(Netflixなどの動画配信サービスが)何なのかよく分かってない。彼はパソコンも使わないし、スマートフォンも使わない。だからデジタルで配信と言ってもピンとこない」とした上で「(宮崎監督に)『映画の制作費をこれで稼ぐ』と説明した」と明らかにしていた(ハフポスト20年3月7日付記事)。
ただ、配信地域は「米国・カナダ・日本を除く」となっており、スタジオジブリ初のフル3DCGI作品で、宮崎吾朗監督が手掛けた『アーヤと魔女』の配信が始まった際も同様に、配信地域は「日本と米国以外」となっていた。フランスの映画配給会社ワイルドパンチとネットフリックスの契約で実現した配信だったが、対象地域に北米や日本が含まれていなかったためとみられる。
日テレは、1985年に『風の谷のナウシカ』をテレビ初放映して以来、映画番組「金曜ロードショー」を通じてスタジオジブリ作品を放送し続けてきた。『魔女の宅急便』からは映画製作に出資を始め、01年開館の「三鷹の森ジブリ美術館」設立を支援するなど、長年、蜜月関係を維持している。
宮崎監督自身が、デジタル機器に否定的な印象を持っているとされる報道もある中、長年の関係を背景に、創業者を説得できるかも配信実現には必要となりそうだ。
報道によれば、会見で福田次期社長はHuluでの配信について「今のところ現状と何も変わっておらず、何かあればこれから考えたい」と答えたという。
国外ではすでにネットフリックスでの作品配信が始まっているため、仮にHuluで配信が始まっても、新規の利用者獲得への影響は限定的かもしれない。だが、根強いファンが多いジブリ作品を配信できれば、日本国内においては競合サービスとの差別化につながる。
日テレは子会社化について「スタジオジブリを子会社にしてこれまで以上に支援していくことは、日本テレビグループ全体の企業価値の向上に大いに資する」とする一方「スタジオジブリの自主性を尊重する」とも明言している。日テレはスタジオジブリ作品の配信を実現させることはできるだろうか。
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