反対に、解像度を粗くして全体像を把握することも重要です。顧客から「商品Aの認知を上げたい」と言われて、認知向上のための施策をいきなり提案するのは効果的ではありません。
商品Aの認知を上げる本来の目的は「商品Aの売り上げを伸ばす」です。この上段にある目的までさかのぼり、本当に認知を上げることが正解なのかを考える必要があります。
営業のリソースが足りておらずリードをさばき切れていないのであれば、せっかく認知を改善しても無駄になってしまいます。認知しているターゲットがズレていたり、プライシングが適切でなかったりなど、別の理由も考えられます。また、実はもっとリピートで売れる可能性があるのであれば、認知よりリピートが増えるようアフターフォローを強化したほうが売り上げにつながることもあります。
このように課題の本来の目的にさかのぼったり、細分化して構造化したりすることで何に対して仮説を考えればいいかが明確になります。仮説はまず今ある情報を結び付けて考えるため、独自性の高い仮説を考えるには経験も必要になってきます。
しかし、若手の営業メンバーと同席していると仮説構築力の前に前提としての問いの設定自体がズレていることがよくあります。どれだけ顧客が気付けていない課題を営業が特定できていたとしても、問いがズレていては意味がありません。
今回説明した「ゴールから考える」「目的にさかのぼったり、細分化して構造化したりする」といった考え方は「何に対して仮説を考えるか」という問いを立てるのに役に立ちます。営業仮説を考えるにあたってベースになり一番重要でもあるので、ぜひ取り組んでみてください。
また拙著「仮説起点の営業論」の「第3章 この5つの視点から「仮説のアイデア」が生まれる」でも具体例含めて説明しています。併せて読んでいただけるとより理解が深まりますのでぜひこちらも手に取ってみてください。
新卒で株式会社キーエンスに入社し工場、生産設備メーカー向けに制御機器の営業をしたのち、SAPジャパン株式会社、オープンテキスト株式会社といった外資のIT企業でエンタープライズ向け営業に従事。その後freee株式会社にてセールス、カスタマーサクセスのマネージャー、セールスイネーブルメントなどを担当。現在はシードフェーズのスタートアップ、株式会社Datableでマーケティング、営業、カスタマーサクセスを管掌。近著『仮説起点の営業論』(KADOKAWA)Twitterはこちら
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