ただ、自分が勤める会社が買収された経験のある人ならば、「そんなうまい話があるわけないじゃん」と冷笑しているのではないか。
世の中には「カネを出すけど口は出さない」などというもの分かりのいい親会社は、ほぼ存在しない。買収当初は「これまで通りやりたいようにやってください」なんて調子のいいことを言うが、次第に親会社の意向を受けた役員が乗り込んできて、徐々に親会社のガバナンスを強めていく。経営にもあれやこれやと干渉してきて、「親のやり方」を押し付けて管理と監視を強めてくるケースが圧倒的に多い。
つまり、日テレも当初は「これまでのジブリのやり方」を尊重するが、宮崎氏や鈴木氏が第一線から退くに連れて徐々に、グループメリットを優先した「日テレのやり方」をジブリに押し付けてくる恐れがあるのだ。
その代表が「資産」の有効活用だ。「宮崎駿の個人商店」ではあり得なかったリメイクプロジェクトが動き出す可能性がある。その代表が、伝説的アニメ映画『風の谷のナウシカ』をリメイクした『シン・ナウシカ』や『実写版 となりのトトロ』『実写版 千と千尋の神隠し』だ。
今回、日テレがジブリ買収を決断したのは「今後ともジブリ作品を応援し、ジブリが映画をつくり続けられる環境を守ることになるならば」ということだ。だが、慈善事業ではないので当然、一部で300億円とも予想されている買収額に見合うだけの「見返り」がなくていけない。
しかし、天才・宮崎駿も次の作品がいつになるか分からない。「後継者が育っていない」ということなので、他の人が制作した作品がヒットするとは限らない。となると、残るは「資産」の活用しかあるまい。そう、「ナウシカ」や「トトロ」という資産の有効活用だ。
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