佐久間俊一(さくま しゅんいち)
レノン株式会社 代表取締役 CEO
城北宣広株式会社(広告業)社外取締役
著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。
グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。
2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。
2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。
日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。
「高齢化」「人口減」「出生率の低下」は、日本ではもう聞き飽きるほど耳にしているキーワードです。中でも小売業は過去の出店攻勢によって既に店舗が飽和し、今後出店で売り上げを上乗せする戦略は限界を迎えています。そのような市場環境で必然的となる選択肢は4つです。
「(1)既存店の売り上げを伸ばす(≒客数か客単価を上げる)」「(2)新たなビジネス価値を付加する」「(3)グローバル市場を強化する」「(4)原価や経費を下げて利益を確保する」――どれか1つに集中する企業もあれば、4つ全てに取り組む企業もあるでしょう。今回はこの中から(2)と(3)のテーマへ特に焦点を当ててみたいと思います。
まず、実際に直近約10年で世界の人口やGDPがどのように変化してきたかを、次のグラフに整理しました。
縦軸は2013〜22年の人口対比、横軸は同範囲の1人当たり名目GDP対比を示しています。人口は国のボリューム、1人当たりGDPは国の生産性変化を見る一つの指標と換言できます。図表内の右上は、生産性もボリュームも成長過程にあるゾーンです。左上は、人口は増加しているが、生産性に課題があり今後の可能性を秘めているゾーン、日本が位置する左下のゾーンは、ボリュームも生産性も減少している(=シュリンク)ゾーンです。
人口も減り、1人当たり生産性も下がっているのですから、日本で小売業が客数や客単価を上げるのが困難になるのは自然なことでしょう。それでも、一部の企業が既存店の業績を伸ばしていることも事実です。しかし、もうそれは“ほんの一部”という状態にまで辿り着いてしまったのが日本の実情といえます。
次の図表は、左が「22年の1人当たり名目GDPを各国が維持していく」と仮定して、50年の各国の人口予測から名目GDPを推計した数字をまとめたものです。右の棒グラフは、50年に向けて22年からどれだけ増減するかを示しています。
日本は、人口が13〜22年で2.4%減。1人当たりGDPは17.4%減となっています。人口は50年までに2000万人ほど減少する見込みなので、GDPは約104兆円も減少する恐れがあります。ただし、この推計はあくまで「22年の1人当たりGDPがそのまま推移した場合」という前提です。日本も各国も、今後の国策や各企業の発展によって変動する数値といえます。その上では、新たなビジネスを創出する必要性があるのです。
新たな市場開拓の参考例として、小売業で「世界一」といえるウォルマートが見せている直近の動きを整理してみましょう。ウォルマートは小売業以外に次のような事業を手掛けています。
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