「高額プラン」の会員が約6割 コストコの「圧倒的成長」を支えるファン戦略と5つの強みここがスゴイよ(1/4 ページ)

» 2023年08月31日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]

著者プロフィール

佐久間俊一(さくま しゅんいち)

レノン株式会社 代表取締役 CEO

城北宣広株式会社(広告業)社外取締役

著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。

グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。

2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。

2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。

日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。


 小売業において、ウォルマート、アマゾンに次ぐ世界第3位の地位を確立しているコストコ・ホールセールの勢いが止まりません。

圧倒的な成長を続けるコストコ(出所:ゲッティイメージズ)

 2019〜22年の売上年平均成長率(CAGR)は、ウォルマートが3.6%であるのに対してコストコは14.1%と圧倒的な差をつけています。次のグラフにある通り、19年比で見ると約1.5倍にまで成長しているのです。売上額においてもウォルマートが21年から136億ドル(約1.7兆円)の拡大を見せた一方、コストコは310億ドル(約4兆円)増と圧倒的な成長を遂げています。

売り上げの成長はウォルマートを大きく上回る

高額プランの「ロイヤルカスタマー」が多数派

 コストコが日本に上陸したのは1999年。福岡県への初出店以来どんどんと規模を拡大し、23年4月時点で32店舗となっています(世界では851店舗)。

 コストコの最も大きな特徴といえば、年会費制でしょう。米国での年会費は安いもので60ドル、日本でも個人会員の「ゴールドスター」が4840円です。全世界の有料会員は6580万人(年会費無料の家族会員は含まず)、日本では600万人以上ともいわれています。22年8月期の発表によると、総会員のうち60%以上がエグゼクティブ会員(米国120ドル、日本9900円)で構成されているようです。

 会員構成は、コストコがいかに高い優良顧客比率を維持しているかを証明しています。会員制度は通常、安いベーシックなプランの会員が大多数を占めるとされているからです。会員数の年平均成長率と売上高を比較してみましょう。売上高が14.1%であるのに対して、会員数は6.9%です。つまり「1会員当たりの売上高」が増加していることを示しています。もう一つのグラフでも分かる通り、19年には1会員当たり売上高が約36万円だったところ、22年には約45万円へと向上しています。

コストコの売り上げ・会員数推移。会員1人に対する売り上げが伸びていることが分かる
1会員当たりの売上高は19年→22年で10万円ほどの成長

 年会費による売上高は22年時点で約5491億円、売上対比にすると1.9%です。次のグラフにある通り、年会費の売上高は増加している中、売上対比率は微減しています。これは前述した通り、1会員当たりの利用額が増加しているという良好な傾向を表しています。

しっかりと売上高を伸ばせている
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