コストコの利益構造も見たいと思います。次のグラフは売上総利益率・販管費比率・営業利益率を比較したものです。コストコは驚くほどの安さで提供していることから、原価率が88.9%と大変高くなっています。それでもウォルマートと近しい営業利益率を達成している要因は販管費比率の低さです。広告宣伝費をはじめとした経費の節約が大変シャープになされていることが予想されます。その中で人件費も同様に削減する傾向と捉えがちですが、コストコはそうではありません。4月にオープンした群馬明和倉庫店では、アルバイトの時給を1500円として募集したことが大きな話題になりました。群馬県の最低賃金は当時895円(現在は935円)ですから、周辺の店舗や企業からすると自社の採用が鈍化するほどのインパクトがあったのではないでしょうか。投資と節約にメリハリをつけた取り組みの結果、営業利益率は3.4%を達成するに至っています。
コストコのモデルを国内ネットスーパー・定期便(サブスク)などの競合と比較して、ポジションを整理したのが次の図です。
左下の「スポット購入×コモディティ」のゾーンは多店舗化している多数の小売業プレーヤーがネットスーパーを展開しているゾーンです。マーケットは大きいものの、ラストワンマイルの課題が根深く、収益をいかにして確保するかの打開策が見出し切れていないゾーンとも換言できます。左上の「スペシャリティ×スポット購入」のゾーンは、食べログmallが3月に販売を終了しました。やはり特定のターゲットに対するスポット販売では、安定さに欠ける部分が否めません。
右上の「定期便×スペシャリティ」のゾーンはオイシックスが大変好調です。コロナ禍でも売上高が1.8倍も伸長し、売上年平均成長率15.8%、会員数は17.6%増を達成しています。コストコは、これら各ゾーンのメリットをうまく取り入れたポジションに位置しています。会員制によってデータ分析力を向上しながら顧客とのつながりを深め、会員しか利用できない店舗とECという限定感の中で、日常品とちょっとした驚きのある商品をバランスよく提供しています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング