「長時間労働を改善したい」 企業がまず取り組むべき3つのプロセスとは?教えて! 組織改革(1/3 ページ)

» 2023年09月29日 08時00分 公開
[武藤久美子ITmedia]
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連載:教えて! 組織改革

 「組織をより良くして、売り上げ増や働き方改革を目指そう」――多くの企業が、日々組織改革に取り組んでいる。変化し続けることを求められる中「実際何も変わらなかった」「変わることばかり求められて疲れてしまった」など、改革が失敗に終わるケースも少なくない。

 本連載では、組織人事コンサルタントの武藤久美子氏が、5回にわたって組織改革道中の落とし穴や壁、その乗り越え方をご紹介。

 「組織をより良くして、業績を上げたい」「社員の働き方を見直し、効率よく働ける環境を整えたい」――多くの企業が、日々組織をより良くするために改革に取り組んでいます。しかし、改革は全社を巻き込む必要があり、簡単なことではないため、うまくいかないケースもよくあります。

 組織改革は、上から言われた目標にただ取り組むだけでは「やらされている感」が募ってしまい、うまくいきません。今回は、「長時間労働の改善」に取り組む場合を事例に設定し、企業がまず取り組むべき3つのプロセスを解説します。

武藤 久美子(ぶとう・くみこ)

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株式会社リクルートマネジメントソリューションズ コンサルティング部 エグゼクティブコンサルタント

2005年、リクルートマネジメントソリューションズ入社。組織・人事のコンサルタントとし てこれまで150社以上を担当。「個と組織を生かす」風土・しくみづくりを手掛ける。専門領域は、働き方改革、ダイバーシティ&インクルージョン、評価・報酬制度、組織開発、小売・サービス業の人材の活躍など。働き方改革やリモートワークなどのコンサルティングにおいて、クライアントの業界の先進事例をつくりだしている。業務改革、風土改革、人材育成を同時実現する手法を得意とする。リクルート ワークス研究所 研究員(現在/兼務)。早稲田大学大学院修了(経営学)。社会保険労務士。著書に『リモートマネジメントの教科書』(著書/クロスメディア・パブリッシング)


「長時間労働を改善したい」 企業はまず何から始めるべきか

 組織改革のステージごとに、どのようなことが起き、組織はどう対応していくべきなのでしょうか? 組織改革の分野で著名なジョン・P・コッター(以下、コッターと記載)の「8つのアクセラレータ」(アクセラレータは「加速させるもの」という意味。コッターの著書『実行する組織』 の中では「ネットワーク組織の基本プロセスを加速するためのシステム」という意味が込められている)も適宜ご紹介していきます。

 コッターが提唱する「8つのアクセラレータ」は、組織改革を成功させるうえで必要な8つのプロセスをまとめたものです。なお『実行する組織』の中では「アクセラレータ」(加速させるもの)と表現されていますが、あまりなじみのない言葉なので、ここからは分かりやすさを重視して「プロセス」と置き換えています。

 前回の記事(「「変革っていう割に何も変わらなかった」と言わせない 組織改革では「4つのステージ」をクリアせよ」)では、改革には4つのステージがあると紹介しました。

 第1のステージは「会社や組織の本気を示すステージ」、第2のステージは「はじめの一歩と変化の機運づくりのステージ」、第3のステージは「アタリマエ行動への進化のステージ」、第4のステージは「しくみへの組み込み、新しい文化に基づく新たな変化のステージ」です。今回は第1のステージをご紹介します。

 今回は「長時間労働改善」といったテーマを全社で行う場合に、どのようなことが行われるかを見てみましょう。こうした全社を対象にしたテーマですと、登場人物として、経営層、人事部門、事業の企画部門、各部門の管理職層とメンバーなどさまざまな方が参画します。ここでは「長時間労働改善」というテーマが会社(経営層や人事総務部門など)から発せられて、各組織(事業部門や部、職場、チーム)でそれを推進していくケースで考えてみましょう。

 「会社や組織の本気を示すステージ」は、コッターの変革を成功させる8段階のアクセラレータでいうと、おおよそ最初の3つ(以下)に対応しています。

(1)危機感を高める

(2)コア・グループをつくる

(3)ビジョンを掲げ、イニシアチブを決める

組織改革 8つのアクセラレータ
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