「変革っていう割に何も変わらなかった」と言わせない 組織改革では「4つのステージ」をクリアせよ教えて! 組織改革(1/2 ページ)

» 2023年08月31日 08時00分 公開
[武藤久美子ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

【開催中!】Digital Business Days -SaaS EXPO- 2023 Summer開催!

日本で「週休3日」は当たり前になるのか 導入企業が語る現在地

【開催期間】2023年8月22日(火)〜9月10日(日)

【視聴】無料

【視聴方法】こちらより事前登録

【概要】最近話題の「週休3日」。実際導入した企業では、制度創出のみならず生産性や売り上げの向上につなげている事例もある。週休3日制を導入した背景とその成果、これから目指す姿を考えたい。

連載:教えて! 組織改革

 「組織をより良くして、売り上げ増や働き方改革を目指そう」――多くの企業が、日々組織改革に取り組んでいる。変化し続けることを求められる中「実際何も変わらなかった」「変わることばかり求められて疲れてしまった」など、改革が失敗に終わるケースも少なくない。

 本連載では、組織人事コンサルタントの武藤久美子氏が、5回にわたって組織改革道中の落とし穴や壁、その乗り越え方をご紹介。

 「御用聞き型の営業を強みにしていた組織だが、これからはコンサルティングや提案型の営業という新たな強みで勝っていこう」「これまではトップダウンで進めてきたが、多くのアイデアが職場や個人から生まれて育つような組織を目指そう」「社員の、会社や仕事に対するエンゲージメントを上げよう」――。

 皆さんの会社や組織では、こうした会社や組織を挙げて新たなことに挑戦しよう、新たな行動様式や風土を組織に根付かせようという活動を、これまでにしたことがありますか? 所属している組織が、そうした活動にまさに取り組んでいる最中という方もいるかもしれません。業務改革、働き方改革、営業組織改革、風土改革など、改革と名の付く活動が行われることはしばしばあります。

 しかしながら、こうした改革はうまくいかないこともあります。どこの時点で“うまくいったか”を判断するかにもよりますが、現在進行形でうまくいっていない方も多いかもしれません。

 例えば改革と聞くと、以下のようなことを思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「毎年のように会社は“変革”とか“変わる年だ”と言っているけれど、変わると言っているだけで何も変わらない」

 

「改革が始まると、会社から社員に意見を求められたり、職場で1カ月くらい活動したりするけれど、すぐに立ち消えになってしまう」

 

「改革が始まると、それを主導している部署の人がプロジェクトを立ち上げて、一定の成果は上がるが、その後定着しない。結局成果として残ったのはプロジェクトのコアメンバーが出世したことくらいだ」

 私は、組織人事コンサルタントとして、クライアントである会社や組織の、全社的な組織改革や組織開発のご支援をしています。組織改革や組織開発を実際に行うのは、クライアントの経営層や管理職の方、メンバー一人一人です。

 私の仕事は、改革の成功確率を上げるために、改革で陥りがちな落とし穴を予測し、事前に対応しておくこと。改革の道中で立ちはだかる高い壁を乗り越えるお手伝いをすることです。

 連載「教えて! 組織改革」では、組織改革のステップや道中の落とし穴、その乗り越え方をご紹介していきたいと思います。

武藤 久美子(ぶとう・くみこ)

photo

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ コンサルティング部 エグゼクティブコンサルタント

2005年、リクルートマネジメントソリューションズ入社。組織・人事のコンサルタントとし てこれまで150社以上を担当。「個と組織を生かす」風土・しくみづくりを手掛ける。専門領域は、働き方改革、ダイバーシティ&インクルージョン、評価・報酬制度、組織開発、小売・サービス業の人材の活躍など。働き方改革やリモートワークなどのコンサルティングにおいて、クライアントの業界の先進事例をつくりだしている。業務改革、風土改革、人材育成を同時実現する手法を得意とする。リクルート ワークス研究所 研究員(現在/兼務)。早稲田大学大学院修了(経営学)。社会保険労務士。著書に『リモートマネジメントの教科書』(著書/クロスメディア・パブリッシング)


8つのプロセスを重視せよ

 組織改革のステップは、いろいろな考え方やアプローチの仕方があります。事態の切迫度合いや影響度合いによっても、取りうる手段が変わることはあります。

 「教えて! 組織改革」の中では、組織改革の分野で著名なハーバード・ビジネススクール名誉教授のジョン・P・コッター(以下、コッターと記載)の組織改革のステップを簡単に紹介しつつ、実際の現場では、私がこれをどのように活用して組織改革を実施しているかをご紹介します。

 コッターは、自身の著書『カモメになったペンギン』(ダイヤモンド社)の中で「変革を成功させる8段階のプロセス」を以下のように述べています。

変革を成功させる8段階のプロセス

(1)危機意識を高める

(2)変革推進チームをつくる

(3)変革のビジョンと戦略を立てる

(4)変革のビジョンを周知徹底する

(5)行動しやすい環境を整える

(6)短期的な成果を生む

(7)さらに変革を進める

(8)新しい文化を築く

 もともとコッターは、1990年代にIBMが存亡の危機に陥った際の改革事例などから、上記のプロセスを見いだしました。本プロセスはその後のいろいろな組織の改革に影響を与えたと言われています。

 一方で「大企業の、かつ危機的状況での改革事例だからこそ、適用できる部分があるのではないか」「今日の企業では、常に変わり続けることを志向しなければならないのに、こんなに厳格なステップを置く必要があるのか」といった批判も受けました。

 コッターはその後、企業や組織が置かれた状況を踏まえ、上記のプロセスを生かしつつ、著書『実行する組織』(ダイヤモンド社)の中で「8つのアクセラレータ」(アクセラレータは「加速させるもの」という意味。本著書の中では「ネットワーク組織の基本プロセスを加速するためのシステム」という意味が込められている)と改変しました。

 文言上では上記プロセスと共通している部分も多いですが、多くの企業で採用されている階層型組織の特徴に、機動力の高い組織運営、多くの社員が改革の担い手となることでスピード感を上げるといった要素が加味されています。

8つのアクセラレータ

(1)危機感を高める

(2)コア・グループをつくる

(3)ビジョンを掲げ、イニシアチブを決める

(4)志願者を増やす

(5)障害物を取り除く

(6)早めに成果を上げて祝う

(7)加速を維持する

(8)変革を体質化する

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.