マーケティング・シンカ論

営業利益62% 時価総額2兆円超のモンスター企業「OBIC」のビジネスモデルを分析勝手に考察!「隠れ優良企業」のビジネスモデルに学ぶ(3/3 ページ)

» 2023年10月03日 08時00分 公開
[林圭介ITmedia]
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今後OBICはどこまで成長するのだろうか?

 さて、ここまで紹介したOBICの特徴をあらためて振り返ってみましょう。まず、各種業界に特化した基幹システム(機能)を先に用意し、少ない初期工数で中堅企業に導入してきました。事前に開発すべき機能が充足すると、そこからは営業利益はどんどん向上する。ついには売り上げ1000億円、営業利益62%というおばけのような数字。

 しまいには、かつてからこだわり続けていた新卒採用×家族主義で社員の定着率も高い。一見すると最強状態に見える同社ですが、今後まだまだ成長するのでしょうか? 勝手ながら同社の今後について予測をしてみます(同社は具体的な中長期の戦略を発表されていないようなので、以降はあくまで筆者のフェルミ推定ベースの想像である点ご容赦ください)。

中堅企業のERP市場の規模や対象企業数は?

 まずはOBIC社の「2.5万社導入」というのが、どのくらいのものなのかを調査してみます。

 基幹システムというのはある程度の売上規模(や社員数)を超えないと必要にはなりません。もちろんあるに越したことはありませんが、投資コストが上回ってしまうため導入しない企業がほとんどだと思います。そのため国内の企業数を売り上げ別の観点から調査することで上記について考えてみます。

 中小企業庁の資料内に日本の企業を売上規模別に集計したものがありましたのでそちらのデータをもとに想像してみます。

売り上げ規模別の国内企業数(画像:中小企業庁の資料をもとに筆者作成)

 個人的な感覚では売り上げ10億円未満の企業はERP(特にOBIC7のようなスペックのもの)の導入は検討しないように思います。事実、OBIC社もIR資料の中で下記のように「年商100億円未満」の顧客をまとめて表現しています。

売り上げ規模別構成比

 仮に、各規模のターゲット含有率を下記のように想定すると、OBIC社のターゲットは国内に最大約4.7万社あると推測できます。

各規模のターゲット含有率の想定(画像:筆者作成)

 あくまで発表されている2.5万社というのは「累計」導入社数なので、アクティブな契約社数ではなさそうです。ちょっと乱暴ですが、現在のアクティブな契約社数は2万であると仮定します。

 そう考えると、現状すでに2万/4.7万=42%は契約中、ということになります。OBICの国内の顧客獲得率を仮置きすると以下のように考えられます。

  • 50%獲得なら(4.7万×50%=2.4万社)→残り0.4万社
  • 60%獲得なら(4.7万×60%=2.8万社)→残り0.8万社
  • 70%獲得なら(4.7万×70%=3.3万社)→残り1.3万社

 OBIC社の累計導入社数は18年に2万、23年に2.5万ということなので、1年で1000社契約社数が伸びた計算になります。

 果たしてどこまで同社のシェアが伸びるのかは不明ですが(そもそも現状もし40%超えが本当だとしたらそれでもすごいシェアだと思います)、上記の推定をもとにすると10年以内にはシェアの上限に達するのかなという印象があります。

 しかし、同社IR資料内の「売上高」のシェアでみると、同社のシェアはまだ30%弱とのこと。先ほどは社数ベースでフェルミ推定をしましたが、現状獲得できていない中堅よりも大手寄りの規模顧客をうまく獲得できればより長く売り上げ成長をキープできる、といったところでしょうか。

OBICのシェア(画像:OBIC「統合報告書2022」より)

 以上、根拠のないフェルミレベルの想像でしたがOBIC社の今後の成長についてでした。同社が実際今後どのように成長するのか、非常に気になりますし、楽しみですね。

著者紹介:林圭介(はやし・けいすけ)

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慶應義塾大学を卒業後、就職という選択をとらず独学で学び、個人事業主としてWeb制作・マーケティング支援事業を展開。その後事業拡大で店舗ビジネスに挑戦するも自らのスキル、事業経験のなさからあえなく失敗。成功のために必要な経験を積む必要があることを痛感。28歳にして初めて会社員としてITベンチャーの門を叩く。

その後Webマーケティングコンサル、出版社と提携してWebメディアの立ち上げ、SaaSモデルのクラウドツールの開発・販売など幅広くITビジネスの立ち上げやグロースに携わり、現在では教育系上場IT企業のCOOを務める。

ビジネスは現場での経験が最も大事だと感じる一方で、「ベースとなる学びの機会」がITベンチャーには不足しているなという考えから、個人としてもビジネスモデルや資料作成ノウハウ等を初級者に対して勉強会主催やメンターという形で支援。「事業がつくれるベンチャーマネージャーになるためのnote」を運営。


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