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人的資本経営って面倒? いやいや「人事のやりたいこと」をする“武器”になる! 歓迎すべき理由とは(2/3 ページ)

» 2023年10月04日 07時30分 公開
[荒岡瑛一郎ITmedia]

「結局は人に関する話」 パフォーマンスとウェルビーイングを両立するには?

 「人的資本経営は結局は人に関する話です。従業員の潜在能力をいかに引き出してパフォーマンスを出せるかという観点と、いかに気持ちよく働いてもらうかというウェルビーイングの観点の両立が大切です」(田中さん)

 この2つを両立させる働き方として、田中さんは6つの要素――雇用、キャリア、組織、社会、ワークスタイル/ワークプレース、情報を挙げた。特に日本で重視すべきがワークスタイルやワークプレースと田中さんは説明する。

 デロイト トーマツが若者に対して「現在の勤め先を選んだ理由」を聞いた「Z・ミレニアル世代年次調査2022」では、ワークライフバランスなどの「職場での過ごしやすさ」に関わる項目と、能力開発などの「個人の成長機会」に関する項目の得票が全世界的に高かった。

 特に日本は働きがいや職場のカルチャー、福利厚生などの得票率が高く、職場環境を重視していると分かる。Z世代よりもミレニアル世代のほうが、この傾向が強い結果だった。優秀な人材を確保し、今後パフォーマンスを発揮してもらうにはワークスタイルやワークプレースの拡充が求められるだろう。

photo ミレニアル世代に聞いた「現在の勤め先を選んだ理由」(デロイト トーマツのZ・ミレニアル世代年次調査2022(PDF)より)

 働き方の改革については、「人的資本経営の11領域のうち組織文化に相当すると考えています。組織文化の項目には、エンゲージメントや従業員の満足度、コミットメント、リテンション(人材確保)の割合などが挙げられています」(田中さん)。これを踏まえて、どのような取り組みが、どのような成果に結び付くのかをストーリー立てて説明をするのがいいと田中さんはアドバイスした。

ハイブリッドワークを成功させる“カギ”

 ワークスタイル改革の施策と成果の例として、田中さんはハイブリッドワークの取り組みを挙げた。コロナ禍を経て多様な働き方が登場している現在は、出社とテレワークそれぞれの利点と課題を踏まえた新しい姿としてのハイブリッドワークが求められている。

 Z・ミレニアル世代年次調査2022では、希望する勤務形態として回答者の約50%がハイブリッドワークを挙げた。さらにZ世代に2年以内の離職意向を聞くと、出社100%またはテレワーク100%の人の約40%が離職意向を示したのに対し、ハイブリッドワークの人は約28%で12ポイントほど低い結果になった。従業員がハイブリッドワークを歓迎していると読み取れる。

photo Z世代とミレニアル世代に聞いた「希望する勤務形態」(デロイト トーマツのZ・ミレニアル世代年次調査2022より)

photo Z世代に聞いた「2年以内の離職意向」(デロイト トーマツのZ・ミレニアル世代年次調査2022より)

 テレワークは便利だが万能ではなく、課題があるからハイブリッドワークという選択肢に注目が集まっている。特に難しいのが社内外のコミュニケーションや企業カルチャーの醸成だ。

 コミュニケーションを目的と手段に分類すると4つに分けられると田中さんは話す。

  1. 日時や参加者が明確なもの(会議や1on1など)
  2. 特定の対象者を一時的に拘束するもの(報告や通知など)
  3. 対象者が明確ではなく、時間的な拘束がないもの(情報共有や掲示板など)
  4. 対象者が明確ではない対面コミュニケーション(出社時のあいさつや立ち話など)

 このうち4つ目がハイブリッドワークの成否を握るカギになる。1〜3つ目までは手段が明確で、会議はWeb会議ツール、報告はメール、情報共有はチャットツールなどを使えば出社を代替できる。しかし4つ目の立ち話は、これが企業カルチャーの土台になることが多いのにオンラインで再現するのが難しい。

photo テレワークにおける課題を分類した図(田中さんの講演資料より)

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