「課題はありますが、人間は賢いので解決策を考え出します。その一例がバーチャルオフィスツールです。デジタル空間で職場を疑似体験することで、これまで難しかったコミュニケーションを確保しようというわけです」(田中さん)
田中さんが所属するデロイト トーマツ コンサルティングでは、実際にバーチャルオフィスを使った実証実験をしている。ハイブリッドワーク時のコミュニケーション促進を目的に、80人が14日間利用して効果を検証したところ、57%の人がオフィスに近いコミュニケーションをする上で効果があると答えた。さらに上司や同僚に声掛けしやすい、他部署のメンバーと会話できるなどの効果があった。
一部メンバーが1年間継続して使ったところ、90%の人がコミュニケーションの向上に効果があった回答。ITツールを使ったコミュニケーションに慣れたことで質と量の両面で成果が出たと田中さんは分析する。
「これからは『人』が大切になります。日本は人口が減っていくし、企業競争力も落ちています。明るい話題がないので個人的にはマズイと思っており、いかに一人一人の価値を高められるかが今後の日本の姿を左右する重要なポイントです。だからこそ、人に意識を向ける人的資本経営という考え方が出てきているのが非常に大事で、これからの企業競争力を高めるのに不可欠だと考えています」(田中さん)
人口が減少する中で、優秀な人材を確保することが企業競争力に影響し、その企業競争力を機関投資家がチェックしている。こんな状況で経営層は「それって効果あるの?」とは言っていられず、必然的に人事関連の施策が担う役割も大きくなる。人的資本経営のストーリーに合わせて取り組むことが必要だ。
この取り組みが広がれば「働く人も幸せになるし、企業も幸せになるし、日本社会も幸せになる」と田中さんは結んだ。
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