NHKネット配信解禁 反発する民間メディアの“歯切れ”の悪さ(3/4 ページ)

» 2023年11月07日 06時30分 公開
[大関暁夫ITmedia]

政治的タブーの「NHK民営化」

 ならば政治が動くべきとも思うのですが、政治家がNHK民営化を口にしないのにも理由があるのです。民営化を望まないメディア各社を敵に回したくない、という計算があるからです。

 小泉政権下の2005年にNHK職員の不正問題やセクハラ問題、さらにはやらせ報道が発覚。「小泉改革=聖域なき構造改革」の最中であったこともあり、急激なNHK批判の高まりは「NHKの民営化を議論すべし」との世論の盛り上がりにつながり、複数の有識者会議でNHK改革について本格議論がなされたということがありました。この時の各有識者会議は、こぞって「公共放送は民営化を検討すべし」との結論を出していました。

 郵政と共にNHKも民営化に向けた議論が具体化するかと思われた矢先、小泉首相は自身の内閣でNHKを特殊法人のまま現状維持するとした01年の「特殊法人等整理合理化計画」が閣議決定されていたことを理由に「NHK民営化はしないという閣議決定を踏まえた方がいい」と発言。この話は突如立ち消えになってしまいました。

 政治の舞台裏で何があったのかもはや知る由はありませんが、人気商売である政治家にとってメディアを敵に回すのは得策ではありません。特にNHK民営化は、NHKだけでなく全民間大手メディアをも敵に回すことになるわけですから。以来NHK民営化論は、政治的タブーとなっているのです。

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