トヨタの未来を全部見せます池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/6 ページ)

» 2023年10月16日 09時40分 公開
[池田直渡ITmedia]

 9月12日と13日。トヨタ自動車は、国内のメディアを招待し、愛知県内の3つの工場、貞宝工場、明知工場、元町工場で、トヨタの未来技術とその考え方を公開した。

トヨタが未来技術とその考え方を公開したイベント「ものづくりワークショップ」

 もうこのあたりを書くのもいい加減飽きたのだが、世間では「トヨタは出遅れ」「終わりの始まり」という声が、特に日経新聞を中心にメディアをにぎわしている。トヨタ自身も馬鹿馬鹿しいと思いつつも、それを放置しておくわけにもいかない。

 現実の問題として、「株価純資産倍率(Price Book-value Ratio:PBR)」が低い値を示している。これは決算における純資産に対する時価総額の比率であり、投資家が企業をどう評価しているかを表す。トヨタは、売り上げも利益も結果を出しているにもかかわらず、直近7カ月にわたりPBRが1倍を割っていた。これは極端な話、投資家が「事業を継続するよりも、すぐに会社を解散して資産を株主で分けたほうがいい」という評価をしていることを意味する。

 逆にいえば、何年にもわたって赤字を垂れ流しているにもかかわらず、株価が上がり続ける会社もある。本来株価は業績に伴って変化するのがセオリーだが、現実はそうではなく「現状に対して将来は……」の先に、「上がるに違いない」と続くか「下がるだろう」と続くかがPBRを決める。トヨタはマスコミのたゆまぬネガティブキャンペーンを受けて、PBRで苦しんでいたのである。

 実際のところ、トヨタはかなりオープンに事業計画を説明してきた会社だが、大手メディアはひたすらBEVの販売台数ひとつをもって将来性を図るというなんとかのひとつ覚えを繰り返し、真面目に事業計画を伝えようとしない。

 そこでトヨタは方針を変え、今年6月にトヨタ自動車東富士研究所で、第1回の「テクニカルワークショップ」を開催した。内外のメディアをはじめ、投資家までも招待して、トヨタの開発中の技術について大規模な説明会を開催したのだ。

 そこでは、40以上の革新的な技術が開示されたが、それでもメディアが報道するのは、あらかじめ耳なじみのあるギガキャスティングと全固体バッテリーばかり。技術と技術のつながりや、それがどんな未来を描くかは、ほぼ報道されなかったといってもいい。しかしそれでも株価は一気に上がり、PBRは1倍を超えたことで、トヨタはとりあえずの目的を果たした。

 この時の東富士でのテクニカルワークショップは、主に技術軸で個別の新技術を説明したものだが、今回の「ものづくりワークショップ」では、それらを使った先で、トヨタの未来がどうなるかを指し示すものとなっていた。

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