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「初任給50万円」のウラ側 みなし残業代を引いたらいくらになるのか?働き方の「今」を知る(5/5 ページ)

» 2023年10月30日 07時00分 公開
[新田龍ITmedia]
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「月額30万円」で高年収な例も

 ちなみに、思い切った初任給額アップを実現した会社はメガベンチャーだけではない。最近話題になったケースとしてはゲーム大手のセガが挙げられる。

 セガ社はこの7月から基本給を底上げするベースアップを実施し、正社員の年収を平均約15%引き上げた。7月以降に入社する大卒初任給は、従前の月額22万2000円から7万8000円増の30万円となり、優秀な人材の確保につなげる考えだ。

 さらにはボーナスの一部を毎月の給与に組み込んだり、退職金を前払いする仕組みなどを組み合わせたりすることによって、月の平均給与は約30%増にもなるという。

 この「30万円」という数字だけを見れば、既出のメガベンチャー各社と比べると見劣りするように感じられるかもしれない。しかし、本稿の説明をじっくりお読みいただいたうえで同社の募集要項を見てみよう。

募集要項、セガの採用サイトより

 ご覧の通り、この「30万円」という数字は、固定残業代や深夜割増手当などを含まない、純粋な基本給額だ。残業代や各種手当はこのベースを基に別途支給される。実は、ベース金額だけをみれば、先出のどのメガベンチャー各社よりも高額な初任給を提示しているのだ。

 このように、固定残業代を含んだ高額初任給提示についてはメリットとデメリットが存在する。求職者には、それを正しく理解して後悔のない就職・転職活動をしていただきたい。

 そして人事労務担当者には、正しい給与の内訳を分かりづらくして知識の乏しい求職者をだますようなことがないよう、適切な記載・説明を心掛けていただきたい。

著者プロフィール・新田龍(にったりょう)

働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役

早稲田大学卒業後、複数の上場企業で事業企画、営業管理職、コンサルタント、人事採用担当職などを歴任。2007年、働き方改革総合研究所株式会社設立。「労働環境改善による業績および従業員エンゲージメント向上支援」「ビジネスと労務関連のトラブル解決支援」「炎上予防とレピュテーション改善支援」を手掛ける。各種メディアで労働問題、ハラスメント、炎上トラブルについてコメント。厚生労働省ハラスメント対策企画委員。

 

著書に『ワタミの失敗〜「善意の会社」がブラック企業と呼ばれた構造』(KADOKAWA)、『問題社員の正しい辞めさせ方』(リチェンジ)他多数。最新刊『炎上回避マニュアル』(徳間書店)、最新監修書『令和版 新社会人が本当に知りたいビジネスマナー大全』(KADOKAWA)発売中。


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