「渋谷に来ないで作戦」は成功か ハロウィーン対応を誤れば、街が衰退するスピン経済の歩き方(4/7 ページ)

» 2023年10月31日 10時46分 公開
[窪田順生ITmedia]

「会場型イベント」への移行

 では、具体的にどうすべきかというと、実は今からちょうど1年前、『渋谷ハロウィーンの「地元にカネが落ちない問題」、どう解決すべきか』という記事の中で既に提案させていただいている。

 それは、「会場型イベント」への移行だ。

 記事でも指摘しているが、渋谷ハロウィーンの最大の問題点は、「主催者のいない自然発生的な路上イベント」ということだ。会場もコースもないので、みんなあちこちで好き勝手にやる。ルールもないので、ハメを外す人もいれば、常識の範囲で楽しむ人もいる。観光イベントとして明確な基準が存在しないので、各自のモラルに任せて、それぞれが「これくらいはセーフでしょ」と迷惑行為をしている状態だ。

 だから、「渋谷ハロウィーン」としてしっかりと「枠組み」をつくる。つまり、主催者を決めて会場を用意して、そのスペース内でルールに基づいて、参加費用を払った人たちにハメを外して楽しんでもらうのだ。

 こうやって観光客の行動圏を人工的にしっかりと確保することで、地域住民の生活圏と重ならないようにして観光公害を軽減させるというのは「ゾーニング」と呼ぶ。そんなゾーニングで渋谷が参考にできる成功事例がある。リオデジャネイロのサンバカーニバルだ。

リオのカーニバル

 世界中から客が訪れるこのイベントも、実は渋谷ハロウィーンと全く同じで「主催者のいない自然発生的な路上イベント」だった。庶民がそのへんの路地に集まって、好き勝手に踊って見物客も酒を飲んでいた。だから当然、ハメを外してケンカもそこら中で起きた。放火もあったしゴミもたくさん出た。まさしく地域住民にとって穏やかな日常を奪う観光公害だった。

 こうした状況に対し、リオはゾーニングで解決した。市の中心部に「サンボードロモ」という巨大な会場を建設して、そこで日本円で2億円以上という高額な賞金をかけたサンバパレードのコンテストを開催。ハメを外したいサンバダンサーたちは、チームを組んで出場するようになった。

 当然、酒を飲みながらウダウダ踊るよりもクオリティーは格段に上がる。そうなると、世界中から観光客も訪れてサンボードロモの入場チケットは飛ぶように売れるようになったのだ。

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