「時間がない」「何からすべきか分からない」 組織改革で直面しがちな4つの不安要素、どう解消する?教えて! 組織改革(2/2 ページ)

» 2023年11月01日 08時00分 公開
[武藤久美子ITmedia]
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「分からない」「時間がない」 できない理由をどう取り除くか

 次に「(5)障害物を取り除く」です。ここでいう障害物とは「できない理由を取り除くこと」を指します。できない理由は「何をやるか分からない」「誰がやるか分からない」「やり方が分からない」「時間が取れない」「自分だけしか動かなかったら嫌だ」――などが挙げられます。

 ちなみに、できない理由に「やりたくない」を挙げませんでした。やりたくない人についても、プロジェクトの初期段階から強制力を持って取り組みに参加してもらうか、やってみたいと思う人からまずは始めてみるかは、企業の社風やテーマの特徴などによるからです。

(写真はイメージ、出所:ゲッティイメージズ)

「何を・誰が」やるか分からない

 話を戻します。「何をやるか分からない」や「誰がやるか分からない」という現象は、組織長が決めることもしなければ、職場ミーティングも開かれないといった要因で起きがちです。

 ただし、職場ミーティングで「それやってみよう!」「それ面白い!」と場が盛り上がって、ノリと勢いで実施内容を決めてしまった場合にも同様の現象が見られます。職場ミーティングの最後の方で、担当者を決めたり、具体的な次のアクションを決めたりする時間を取るのが良いでしょう。

 「やり方が分からない」は、やり方を示せば済むもの、はじめの取り組みだけは決めておいて、その結果を見て次のことを考えるべきものがあります。これらは、自組織内で完結する取り組みについては有効です。また、やり方が分からないものには、自部署だけで解決しないものがあります。この場合は「見える化」から始めるのが良い場合が多いです。

 例えば、長時間労働を引き起こしている背景としてよく挙がってくることの1つに「いろいろな部署からの報告事項が多くて時間が取られる」があります。

 しかしその「いろいろな部署」は、それぞれが必要だと思っているからその報告書の確認を依頼しているわけです。また、隣の部署の依頼内容や依頼状況は知らないこともあります。そこで、まずは報告内容のリスト化から始めます。以下の内容をまずは1カ月分まとめます。

  • 依頼がきた日時
  • 締め切り
  • 依頼してきた部署
  • 当該部署での作成者
  • 概要
  • 報告書作成にかかる時間
  • 備考(例:同じ情報を営業部門の複数の部署から依頼されている、何に使っているのか不明、独自のフォーマットへの入力に時間がかかる)

 こうした内容をまとめてみると「休日前の夕方に届いて、休日明けが締め切りの報告書が〇%ある」「システムから見てもらえれば済む内容が〇%ある」など、いろいろなことが分かりますし、「見える化」によって、関係部署を動かす武器にもなります。

「何からすべきか」分からない

 第2ステージは「はじめの一歩」を行うステージだと前述しました。ここで良くあるケースが「取り組もうとする課題が大きすぎて、どこから手をつけたらいいか分からない」というものです。

 組織改革が必要な場面では「取り組むべき課題はある程度分かっているのだけれど、収集がつかなくなるので誰もやりたがらないこと」を扱うことが多いです。よって、大きいままの課題を扱うと、取り組み自体が思い浮かばなかったり、思い浮かんでも「しょせん無理だ」と思ったりしてしまいがちです。それでは良い取り組みの案が浮かんでいたとしても状況は何も変わりません。はじめの一歩は、取り組めるイメージが湧くこと、頑張れば取り組めると思えるものが良いでしょう。

「時間がない」 

 次のできない理由は「時間が取れない」ですが、組織改革のための取り組みは日常業務に追加で乗っかってきます。特に「長時間労働の改善」というテーマでは、その「時間が取れない」こと自体を解消しようとする取り組みでもあるので、「時間が取れない」と悩むケースが度々あります。

 今これを読んでくださっている方が経営層や本社の方で、パイロット部署を選ぶ立場にある場合には、忙し過ぎて心身共に大変な部署を選定するのは避けたり、トライアル時期をずらしたりした方がいいかもしれません。また、企業や部署によっては、プロジェクト推進のキーとなる人が忙しすぎるときに、その人が動けるように業務調整をしたり、サポートする人をつけたりすることもあります。

「自分だけしか動かなかったらどうしよう」という不安

 最後の「自分だけしか動かなかったら嫌だ」というのもよくあります。これには、「はしごを外されたら困る」「目立ってしまったら恥ずかしい」などいろいろな感情がありますが、組織改革において、孤軍奮闘する人が出る事態は避けたいですね。

 特に、率先して取り組んでくれる人が肩身の狭い思いをしたり、一人で抱え込んだりしないようにすることは、後に続く人をつくるためにも大事です。チーム全員で取り組む、必要な支援を本人に尋ねる、本人からではなく、周囲から「良い取り組み」として取り上げてもらうなど、方法はさまざまですので、ご自身の組織やメンバーに合ったものを考えてみてください。

 今回は「はじめの一歩と変化の機運づくりのステージ」について、「長時間労働の改善」を題材にご紹介していきました。コッターが実務的にどのように扱われるかについても少し感じていただけたかもしれません。次回は、「アタリマエ行動への進化のステージ」を取り上げます。

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