新時代セールスの教科書

「目標の商談数、達成できる?」 上司の進捗確認を切り抜ける3つの「前向きな言い訳」営業コミュニケーション大解剖(2/2 ページ)

» 2023年11月07日 08時00分 公開
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シーン2:「なぜ例の案件の進捗は遅れているの?」

 営業は仕事の幅が広く、必然的に他部署との連携も増えてきます。社内の関係部署を動かすのも営業の仕事なわけですが、なかなか簡単に動いてくれないこともあるでしょう。

  • 上司:「なぜ例の案件は進捗が遅れているの?」
  • 正直すぎる返答:「自分はベスト尽くしているのですが、あの部署が協力してくれなくて……」
  • うまい言い訳:「あの部署さえ動いてくれれば、一気に進む状況まで来ています。上司さんからも一言お声掛けいただけると助かります」

 部署が異なれば、目標や優先順位が違うもの。うまく協力関係を築くことは重要ですが、とても難しいです。とは言え、あまりに他の部署のせいにしていては推進能力を疑われたり、他責な印象を与えたりしかねません。

 このシーンでは、実はある程度正直になって他の部署の動きを促すためのアクションを取ることが大切です。組織間の問題に対処するのは、組織のリーダーである上司の仕事だからです。一方で、営業であるあなた個人の推進力や責任感を疑われない印象を与えるために、あくまで前向きに、しかし必要なサポートを明確に表現することがポイントです。

シーン3:「例の案件、取れると言っていたけど、なぜ受注が遅れているの?」

 最後は提案先の意思決定が遅れているシーンでのうまい言い訳を紹介します。決裁者の承認は得たのに、現場で実際に使う責任者の同意が得られていないなど、経験したことのある営業も多いシーンではないでしょうか。

  • 上司:「例の案件、取れると言っていたけどなぜ受注が遅れているの?」
  • 正直すぎる返答:「お客さまの上位者がなかなか意思決定してくれなくて……。受注が来期にずれ込みそうです」
  • うまい言い訳:「お客さまから秘密裡に聞いたのですが、本件は先方の社内でも重要案件として取り扱われ慎重に議論がなされているようです。受注は延期になるリスクがあるのは事実ですが、この機会に先方の上位役職者との関係拡大を狙います」

 案件受注時期の延期リスクなどの重要な情報もまた、ある程度正直に伝えた方が長期的な信頼につながるでしょう。一方で営業としての見込みの甘さや、提案先とのコミュニケーション不足を疑われることは避けたいところです。

 うまい言い訳では、リスクとして状況を伝えつつも、営業であるあなたが提案先と関係を築けていることを強調したうえで、この状況を新たな機会として捉えるスタンスを示しました。このほかにも、遅延の具体的な状況を把握し伝えることや、以前からリスクを認識していることを伝えつつリカバリープランを提示することも効果的でしょう。

うまい言い訳は「ズル」ではない

 ここまで、営業のみなさんが直面しうるさまざまな進捗確認シーンを例に、上司の期待を理解しながらうまく切り返す方法を紹介してきました。もちろん、事業内容や上司のタイプ、個別の状況によって効果的な切り返し方はこのほかにもあり得るかと思います。

 しかし、いかなる時にも「他責にしすぎず、前向きに、上司が本当に気にしていることを理解し、必要十分に情報を提供する」ことを意識するのが大切な点には変わりがないはずです。ぜひ明日から、この考え方を取り入れて自分らしく働ける状況づくりを目指してみてください。

筆者プロフィール:水嶋 玲以仁 グローバル・インサイト合同会社 創設者兼CEO

インサイドセールスの実務全般について、20年に及ぶ経験を持つ。そのうち16年間は、世界有数のIT企業でBtoB及びBtoCのインサイドセールス、営業チームの発展と管理業務に携わる。(Dell で7年、 マイクロソフトで6年、Googleで3年)。その後、JTB、NEC、ソフトバンクなど日本企業のコンサルティングの実績を持つ。著書に「インサイドセールス究極の営業術」(ダイヤモンド出版)「リモート営業入門」(日経文庫)「実践営業デジタルシフト」(日本経済出版)。


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