利用されない指定席券売機 やっぱり「駅の窓口廃止」は間違っている杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)

» 2023年11月10日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

煩雑すぎる操作が嫌われる原因

 みどりの窓口と指定席券売機を併設している駅に行くと、みどりの窓口は長い行列ができていて、指定席券売機の前には誰もいないという風景を見かける。指定席券売機はこれほど人気がないし、もしかしたら並んでいる人たちは、指定席券売機のある駅からみどりの窓口のある駅にやってきたかもしれない。

 インターネットやスマートフォンは普及したけれども、だからといって、それで指定席券の予約までできる人は少ない。では指定席券売機で、となるけれども、かなり手間がかかる。奇しくもJR東日本のサイト「指定席券売機ご利用案内 体験版」でそれが証明されている。

指定席券売機の体験版は、スライドをスクロールする紙芝居方式。ゲーム業界出身者からすると、体験版とは実際に画面をクリックして次の画面に遷移させるプログラムだが、これは違う。体験といえるだろうか?(出典:JR東日本、指定席券売機ご利用案内 体験版

 指定席券売機のメニューがすでに不親切だ。お客様の希望はまず「○○駅へ行きたい」であって、「指定席に乗りたい」「自由席が良い」はその次だ。手順が逆になっている。○○駅へ行くためにどんな列車があるかを先に想像する必要がある。まずは目的地を確定させてほしい。

 例えば、あなたがこの記事ページで「ITmedia」のロゴを指さすとする。あなたは指の先端をロゴに持っていく。意識は常に指先にある。「まず肩を上げて、腕の角度を変えて、肘の関節を曲げて、手を開いて人差し指を伸ばして……」という意識はしない。これが人の動き方だ。「指定席か自由席か」という選択肢は、「肩と腕のどちらを先に動かしますか」というようなもので、最初に意識すべきことではない。

 だから指定席券売機には、まず「どこに行きますか」というボタンが必要ではないか。もちろんその機能はある。右上の大きな「乗換案内から購入」だ。右下の「乗車券」も五十音順で駅の指定から作業を開始する。しかし初見は「どこに行きますか」だろう。それなら直感的に操作できる。

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