さようなら、マザーズ指数 「日本版ナスダック」になれず低迷した3つのワケ古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)

» 2023年11月10日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

 11月6日、日本経済におけるベンチャー企業のバロメーターとして20年にわたり存在感を示してきた「東証マザーズ指数」の名称がついに変更となり、「東証グロース市場250指数」として新たなスタートを切った。

photo 「東証グロース市場250指数」に名称変更された(日本取引所グループ公式Webサイトより)

 マザーズ指数が最も高かったのは2006年の2799.66で、程なく発生したライブドアショックの影響などもあり最悪期には10分の1以下となる255.95まで転落した。アベノミクスのもとでさえも目立った戻しを見せることはなく、足元の円安・株高を持ってしてもついに上がることはなかった。

 マザーズ指数として最後の終値は11月2日の663.86。23年前には1000ポイントから計算がスタートしたため、全期間のパフォーマンスでみても34%のマイナスだった。マザーズ上場企業に限って投資をするくらいなら、そのお金を普通預金にそのまま預けていた方が相当マシだったという散々な結果である。

 当初は米国における新興市場の株式指数である「ナスダック」に追随するとさえも期待されていたマザーズ指数。なぜこのような結果に終わってしまったのか。元凶は3つあった。

マザーズ指数を低迷させた「三重苦」

 マザーズ市場が投資家の信頼を失った大きな問題は「上場ゴール」にあるだろう。上場ゴールとは、創業者や初期の投資家が株式を現金化し、利益を確定させることを目的とした株式の上場をいう。

 マザーズ市場は、業績が出るまでに時間がかかるような有望スタートアップ企業に対しても資金調達の機会を提供するために赤字でも上場が可能であり、その審査も比較的緩いものであった。本来、企業価値はその時点の利益と成長率から逆算して算定されるはずだが、マザーズ銘柄は仮に売り上げがゼロであっても、社会情勢やビジョン、CEOの経歴などで高い時価総額を正当化することも可能だったのだ。

 いわば“夢”を語ることによって上場に成功し、創業者や早期投資家が利益を得たら、業績予想の下方修正という“現実”が株価の暴落という形で市場参加者に突きつけられる━━。そんな不条理を皮肉った言葉として「上場ゴール」という言葉が生まれたこと自体が、マザーズ市場のゆがみを物語っていたといえるだろう。

 また、マザーズ指数を構成する銘柄は、大きくても時価総額1000億〜2000億円程度で値動きが激しく、粉飾決算などの不祥事も多く発生し、投資リスクが高い状態だった。たとえ1000億円という時価総額であっても、日本の株取引高の大半を占める海外の機関投資家からすると小さすぎて積極的に投資できないサイズ感であることも問題だ。

 そのため、個人投資家による信用取引が売買フローの多くを占め、値動きが非常に激しいものとなった。特に、購入したマザーズ銘柄を信用取引における証拠金の代わりに担保に入れて「二階建て」するという過度に投機的な投資行動も散見され、それが結果的にライブドアショックにおけるマザーズ市場全体の崩壊につながったという経緯もある。

 そんな市場としてのリスクの高さが、マザーズ指数への大口資金を遠ざけているのだ。

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