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「島根にPCあるワケない」から約20年 人口減でもIT人材が集まり続ける納得の理由増えるIT人口(2/3 ページ)

» 2023年11月20日 08時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

 松江市がRubyの聖地とすれば、出雲市が目指すのはビジネスの縁結びにおける聖地、といえるかもしれない。イズモノマドを運営するのは、官民共同で出資して5月に立ち上げたPeople Cloud(ピープルクラウド、島根県出雲市)だ。

 同社は「出雲から、Izumoへ」をスローガンに掲げ、市内における企業と人の縁結びに関する取り組みを行っている。代表的な取り組みが「Hello, Yaponiya」だ。

 もともとは出資元のSAMI Japanが実施していたもので、日本企業で働く意向のある外国人材を募集し、日本語のレッスンや滞在プログラムを提供しながら、日本企業とのマッチングを行っている。

 特に狙いを定めるのが、東欧地域の人材だ。ピープルクラウド代表取締役の牧野寛氏は「旧ソ連時代から東欧地域は優秀な理数教育の基盤があり、ノーベル賞を受賞した人も多い。ロシアやウクライナ、ベラルーシだけでも200万人のITエンジニアがいるとされている」と話す。

ピープルクラウドの牧野寛氏

 昨今の情勢不安により人材の流出傾向が強まっており、ロシアで10万人、ウクライナ・ベラルーシでも数万人単位が地域外への動きを見せているとも話す牧野氏。こうした人材を日本へと呼び込み、地元だけでなく国内企業のグローバル化やIT強化の支援を狙っている。

 22年10月から実験的に行った初回の募集では、想定していた20〜30人に対して、17カ国・105人からの応募があった。そのうち8人を採択し、すでに5人が就職を決めている。

 Hello, Yaponiyaで目指すのは、人材と企業、そして地域の「三方良し」だ。まず、不安定な国際情勢によってキャリアの構築が困難になっている人材へ、安定した環境を提供する。加えて、企業に対してはグローバルな人材を提供することで「中から変える」(牧野氏)好機を提供。さらに、関係人口や優秀人材の増加による地域全体への好影響も狙う。

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