なぜバーガーキングの店舗数は増えているのか 100店→200店の舞台裏水曜日に「へえ」な話(1/5 ページ)

» 2023年11月22日 08時30分 公開
[土肥義則ITmedia]

 ハンバーガーチェーンの「バーガーキング」と聞いて、どのようなイメージをもっている人が多いのか。「ワッパーは大きくておいしいよね」「パティはたしか直火焼きだったはず。他のチェーンとはちょっと違うよね」といった声が聞こえてきそうだが、一方で心が“ざわざわ”している人もいるかもしれない。SNSでたびたび盛り上がっている、「マクドナルドをイジる戦略」だ。

バーガーキングで人気の「ワッパー」

 時計の針を3年ほど巻き戻す。2020年1月、マクドナルド秋葉原昭和通り店が閉店することになって、店には「22年間のご愛顧ありがとうございました」と書かれた垂れ幕が設置された。そこには別れを告げるドナルドの後ろ姿と「See you」の文字が記されていたので、リピーターは「残念だなあ」と思っていたはずである。

 しかし、数日後のこと。近くにあったバーガーキングの店が「22年間たくさんのハッピーをありがとう」という垂れ幕を掲げた。バーガーキングの店員が頭を下げて、「Thank you」の文字が記されていたので、これを見た人たちは「うるうる」きたかもしれない。「ガチで勝負していたと思うけれど、互いをリスペクトする姿っていいよなあ」と。

 しかし、よーく見ると、うるうるできない文字が並んでいたのだ。一番左側の文字を「縦読み」すると、次の言葉が浮かび上がる。「私たちの勝チ」――。

「22年間たくさんのハッピーをありがとう」という垂れ幕を店頭に掲げた(左)。マクドナルド秋葉原昭和通り店がスケールアップして再出店した際のポスター。縦読みすると……?(出典:ビーケージャパンホールディングス)


 店じまいをするマクドナルドに「感謝の言葉」を述べているように見えて、実は「勝利宣言」を誇っていた……とも受け取れるのだ。このほかにも何度もマクドナルドをネタにした広告を展開しているわけだが、バーガーキングを運営するビーケージャパンホールディングス(東京都千代田区)の野村一裕社長に取材する機会があったので、なぜそんなにマクドナルドを意識しているのかを聞いてみた。

 すると「自己紹介のひとつ」として、広告の文言を考えているという。ハンバーガーチェーンの絶対王者といえば「マクドナルド」である。一方のバーガーキングについて、野村さんは「弱者だと思っている」ときっぱり。売り上げも違えば、店舗数も違えば、資金力も違う。なにもかも圧倒的な「差」がある中で、消費者に振り向いてもらうにはどうすればいいのか。知ってもらうためにはどうすればいいのか。その手法のひとつとして、ウィットに富んだ“自己紹介”があるようだ。

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