QRコード、タッチ決済 鉄道はキャッシュレス乗車でどのように進化するか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/6 ページ)

» 2023年11月25日 08時30分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 近ごろ都市部の自動改札機に、小さな箱が取り付けられている。正面や側面にガラス窓が付き、まるで小さなイメージスキャナだ。そう、これはスキャナーだ。QRコードを読み取る機械である。紙のチケットやスマートフォンの画面にきっぷの情報をQRコードで表示して、このスキャナーにかざすと改札機を通過できる。

 クレジットカードのタッチ決済機能が付いた機種もある。コンビニでタッチ決済するように、クレジットカードをタッチする。きっぷを買わなくても電車に乗れる。便利だし、クレジットカード会社によってはポイントが付くからおトクでもある。

東急電鉄が設置した改札機。いかにも後付けな姿だが、普及すればまとまったデザインになるだろう(出典:東急電鉄、「クレジットカードのタッチ機能」「QRコード」を活用した乗車サービスの実証実験を8月20日(水)から開始

 しかしJRや大手私鉄は、すでに交通系ICカードが普及している。JR東日本の場合、全1677駅(BRT含む)のうち887駅が交通系ICカードに対応し、交通系ICカードの利用は全乗車回数のうち約9割にもなる。1日のSuica利用件数は5100万件だ。全国規模では約5000の駅、約5万台のバスで交通系ICカードが利用可能だ。交通系ICカードを利用できる事業者は322社。JR東日本は「地域連携ICカード」を開発し、地域の交通事業者の交通系ICカード導入を支援している。宇都宮ライトレールも地域連携ICカードのtotra(トトラ)を採用した。

 交通系ICカードが普及、定着したにもかかわらず、交通事業者はなぜQRコードやクレジットカードのタッチ決済を導入するのだろうか。いずれ交通系ICカードがなくなるかといえば、それは違う。QRコードやクレジットカードを使うためには与信が伴う。しかし子どもや高齢者のほか、現金が最も信用できる通貨だと考える人は現金チャージを必要とする。だから交通系ICカードはなくならない。もっと機能を増やし、さまざまな割引制度、フリーきっぷなどに対応して便利になっていく。

 交通系ICカードで十分なはずが、なぜQRコードやクレジットカードタッチ乗車にも対応するのか。これからどうなっていくのか。

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