教習所のクルマが旧態依然としているワケ 教習車ならではの事情高根英幸 「クルマのミライ」(3/5 ページ)

» 2023年11月26日 08時30分 公開
[高根英幸ITmedia]

指定教習所は法令によって縛られている

 意外と知られていないのだが、自動車教習所は、教習に使われるコースの内容も決まっていれば、その教習に使われるクルマ、教習車にも制約がある。コースの内容や道路の幅、教習車の大きさなどは厳格に決められているのだ。こうした旧態依然としたところに、良く言えば日本特有の真面目さ、悪く言えば頭の硬さを感じさせる。

 実は事故死傷者が減少しているのは、免許取得の厳格さや取り締まりなどによる安全に対する意識の高まりよりも、自動車メーカーによる安全装備、衝突安全性の向上によるところが大きい。

 つまり交通ルールや取り締まり、さらには運転するドライバーが交通事故死傷者減少に対して貢献している割合は少ない。なぜなら交通事故の発生件数は半減している程度であり、その理由も自動ブレーキによってドライバーの操作ミスが減少している効果が大きいからだ。

教習の内容やコースは厳格に決められている(画像:ゲッティイメージズ)

 今や新しい自動車教習所が開所されることは非常に少ない。合宿型を過疎地に作ることもあり得なくはないが、それでもかなりのレアケースだろう。そうなると教習車を完全に一新することは難しいことが見えてくる。

 まず大前提として、高速教習以外(これも教習所によって姿勢が異なる)は同一車種で教習を行うのが原則となっている。これは教習生が操作に慣れやすいということが大きな理由だ。

 それでもコンフォートのように、生産が終了されてしまったクルマは別の車種に交代させるしかない。そうなるとできるだけ今までのクルマと変化の少ない車種を選んで、車種による教習のレベル差を抑えようとすることになる。

 だからミニバンやSUVが人気でも、セダンを使い続けることになり、旧型のカローラや国内仕様にはないデミオのセダンを自動車メーカーが用意することになる。

 ブレーキのホールド機能やEPBは、坂道発進などの運転操作を助けてくれるものだが、新しい機能によって運転が楽になると、試験の合格レベルが下がってしまうことになる。これでは免許試験の公平性が保たれないから、教習に利用することは難しい。

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