水を温めただけの「白湯」が、なぜ想定の3倍も売れたのか アサヒの“着眼点”が面白い水曜日に「へえ」な話(4/5 ページ)

» 2023年11月29日 08時30分 公開
[土肥義則ITmedia]

「お〜いお茶」と逆パターン

 ……と、ここまで「白湯の1年」を振り返ってきたわけだが、人気が出た背景に何があったのか。個人的には、商品名を変えたことも要因のひとつだと思っている。ちょっと違う商品になるが、ネーミングを変えたことによって、売り上げを伸ばしたモノがある。例えば、伊藤園の「お〜いお茶」だ。

 もう忘れている人が多いかもしれないが、この商品が登場したのは1984年のことで、当初の名前は「缶入り煎茶」。しかし、売れ行きはいまひとつ。調査したところ「煎茶」の読み方が分からないという声が多く、伊藤園は89年に「お〜いお茶」に改名。その後、売り上げがどんどん伸びていって、22年8月に累計販売数が400億本を突破した。

1984年に発売した「缶入り煎茶」
1989年2月発売の「お〜いお茶 せん茶」パッケージ(左、出典:伊藤園)

 もちろん、名前を変えただけで、商品が売れたわけではない。さまざまな要因がからみあっているわけだが、「缶入り煎茶→お〜いお茶」にしたことで、消費者は“分かりやすさ”や“親しみやすさ”を感じたことが大きいと言われている。

 この話をすると、「ん? 『煎茶』は読みにくかったから、名前を変えたんだよね。となると、『白湯』が売れた理由はおかしくない?」と思われたかもしれないが、その通りである。「お〜いお茶」とは逆パターンで、「白湯」については“インパクト”を感じた人が多く、ヒットにつながったのではないかと思っている。

 冒頭で紹介したように「白湯」は、クイズにもなる漢字である。読めそうで、読みにくい。パッケージに大きく書かれた文字を見た人は「ん、なんだろう?」「なんて読むんだろう」となる。少なくとも「天然水 ホット」という言葉から感じられないココロの揺さぶられ方によって、消費者は「ちょっと買ってみようか」といった気分になったのかもしれない。

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