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「年収106万円の壁」の助成金 首都圏企業の反応が薄い意外な理由施策実施から1カ月(3/3 ページ)

» 2023年12月07日 08時00分 公開
[佐藤敦規ITmedia]
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助成金に対する反応が薄い意外な理由

 「年収の壁・支援強化パッケージ」が10月20日に実施されてから、1カ月が経過しています。実際の企業からの反応はどうだったでしょうか? 130万円の壁対策である被扶養者の認定に関する問い合わせは多いものの、助成金に関する問い合わせは今のところそれほど多くありません。

 厚生労働省では、より多くの企業が利用しやすいようフルカラーでイラスト入りの親しみやすいパンフレットや解説動画を用意。さらに会社都合の退職者がいる場合は、助成金を申請できないことも多いのですが、社会保険適用時処遇改善コースではこの要件をなくしました。コロナ禍で活用された雇用調整助成金以来、力を入れている助成金と言えるでしょう。しかし対象者数の違いがあるといえ、企業や労働者からの問い合わせで労働局やハローワークの電話がつながらなくなった雇用調整助成金とは、温度差があるようです。

 助成金の制度が複雑で分かりにくいなどの理由もあると思われますが、個人的には首都圏において対象者が少ないというのが主な理由ではないかと考えております。人手不足の影響か、パート・アルバイト社員や派遣社員の時給は高騰しています。101人以上の企業で週20時間前後働いている社員の大半は月額8万8000円、つまり106万円の壁をすでに突破していて、社会保険にも加入済みだからです。前述したように、助成金は10月以降に社会保険に加入した人が対象となります。今年の最低賃金の底上げを機会に月額8万8000円を超えるようになった人は少ないように思われます。

 週16時間で働いている人の時間を延長して20時間にすれば、社会保険に加入することになりますが、この場合は労働者の納得を得られないことが想定されます。働く時間が増えても手取りの収入が減ってしまうからです。もっとも最低賃金が低い大都市圏以外の地域であれば対象者も増えるので状況は異なるかもしれません。

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