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若者こそ「忘年会したい!」 それでも昭和の上司が勘違いしてはいけないワケ河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/3 ページ)

» 2023年12月08日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

昨日の飲み会って、残業代は出ますよね?

 実は過去にも、若い社員の「飲み会の参加意欲」が高まった年があります。「アベノミクス」で、国内の経済指標が軒並み好転した2013年の忘年会と年明けの新年会です。

 当時の私のメモを見返したところ、新入社員を対象に実施したアンケートで8割近くが「上司と飲みたい」と回答。私のインタビューの協力者の中にも、「上司と部下の親睦を深めるために、今年は忘年会を行いました!」「会社もリーマンで大変でしたけど、やっと軌道に乗りはじめたので新年会をやります!」「うちの会社でも、風通しのいい会社にしよう! と全員参加の忘年会がやりました!」と、会社の飲み会を計画する上司たちが増えていました。

画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ

 ところが、です。その中に「昨日の飲み会って、残業代は出ますよね? って言われちゃって」と、嘆く男性=上司がいたのです。

 飲み会の翌朝、部下に「上司から言われてやることは、全て業務ですよね? 当然、残業代が出るんだと思っていました」と言われた、と。

 男性はなんとかその場を「参加したくないときは断っていい。昨日の残業代は出ない。申し訳なかった」と説き伏せたそうですが、「今どきの部下の扱いは、常識が通じない。残業代なんて出るわけないですよね」と話していました。

 ……「今どきの部下」。上司が好んで使う言葉です。

 確かに、 バブル時代を闊歩(かっぽ)した新人たちが「残業代って出ますよね?」と飲み会の翌日、上司に聞くことはありませんでした。しかしながら、心の中でそう思っていた人はいたのではないでしょうか。

 そもそも昭和の職場で「飲みニケーション」が成立していたのは、会社が一つのコミュニティとして機能し、お酒が、上司と部下をいい関係にさせる潤滑油となっていたからです。

 会社にとって社員は「大切な人」だった。「安心して働きなさい」と社員を雇い続けていたし、「経験」という数字に反映されにくい力を、ちゃんと評価する年功序列という制度もあった。だからこそ、社員は会社のために頑張った。そこには会社へのコミットメントが存在しました。

 「会社と社員の思いが共有されている」という前提のもと、上司=ベテラン社員は、部下=若い社員を自分のテリトリーに連れまわり、部下は上司と行動を共にすることで、仕事のやり方、交渉の仕方、上の人との接し方、ときには酒の飲み方や店員さんとの関わり方まで学びました。上司が部下を育て、先輩が後輩を育てるのは会社員の仕事であり「美徳」だったのです。

 だからこそ、忘年会で「みんな今年もお疲れさま!」とお互いにねぎらい、新年会で「みんな今年も一緒に頑張ろう!」と結束できました。

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